中小企業の人事【5段階評価】の作り方と使い方

中小企業の人事評価基準で、もっとも一般的な「5段階評価」。意外にもこの「5段階の定義」を曖昧なまま運用している企業が少なくありません。あるいは「5段階の定義」は明確であっても、その定義にそって運用できていない企業も散見されます。

この記事では、社員の成長支援と、給与や賞与に反映させることを目的とした「成長支援型人事評価」の視点で「人事評価基準」の作り方と使い方のポイントを紹介します。

ぜひ参考にしていただき、よりクリアな人事評価基準で社員さんの成長を支援してほしいと思います。

中小企業に人事評価は必要か?

身もフタもない話ですが・・・そもそも中小企業に人事評価は必要なのか?

ボクの結論は、一部の経営者を除いて「絶対に必要」です。この一部の経営者というのは、強いカリスマ性を持ち、そのキャラクターで社員たちを惹きつけているスタータイプの経営者。社員たちは、スターである経営者のファンであり、ほぼ無条件に自分たちのトップリーダーとして認めています。チームがそのような状態であれば「普通の経営」の仕組みは必要ない、とボクは思っています。

でも、このブログの読者は、良い意味でも、悪い意味でも、ボクと同じ「普通の経営者」です。多少非常識な部分があっても、それを打ち消すほどの強いカリスマ性を持ったタイプではありません。そんな「普通の経営者」には「普通の方法」が必要であり、そのひとつが「人事評価」だと思っています。

だから「人事評価は必要ですか?」と相談を受けた時は「絶対必要!」とアドバイスすることにしています。

何のために人事評価は必要なのか?

「じゃあ、なぜ人事評価は必要なのですか?」と次の質問・相談が飛んできます。そのボクの答えは・・・

「社員を育て、組織を育て、良いチームを作るため」

です。

ボクは常々老若男女問わず、規模を問わず、業種を問わず、経営者には「幸福であってほしい」と思っています。

経営者の幸福に、最も影響するのが「お金」とともに「人事」です。よく「ヒト・モノ・カネ」と言いますが、この3つのクオリティやレベルが経営を左右します。

そのひとつの「ヒト」のクオリティやレベルを上げるためのツールが人事評価に他なりません。

つまり「想い通り経営」を実現するために、人材の成長支援は不可欠であり、その最も有効なツールが「人事評価」であり、決して避けて通れません。

(参考)「想い通り経営」のための経営者の心技体

人事評価基準はどうあるべきだろうか?

前置きが長くなってしまいました・・・。

さて、前述したように、人事評価は「成長支援」の手段であり、目的ではありません。「成長」は「課題解決」の連続の結果です。どんな人も「課題」を抱えています。人は課題を一つ一つ解決することでランクアップ=成長していきます。「できなかったこと」が「できるようになる」のは、「課題」が「解決」する、ということです。

「課題」とは

課題発見の方程式(課題)=(あるべき姿)-(現状)

です。人事評価はこの「現状」を点数化し「本来どうあるべきか?=満点」との差をお互いに誤解なく共有するための道具でなければなりません。

「5点満点中、君は現状3点だね」
「満点にするためには、どうすればよいか?考えてみよう」

(あるべき姿5点)-(現状3点)=(解決すべき課題2点分)

という具合です。

つまり、人事評価基準の各項目の「満点」は、経営者が求める「当社の社員のあるべき姿」のリストです。人事評価基準は「経営者が求める社員のあるべき姿」を具体的に言語化したものなのです。

だから、どこかのサイトで無料配布されている「既製品」をダウンロードしておしまい、という安易な取り組みはお勧めしません(もちろん、たまたま経営者の想いとその既製品が一致すればラッキーだですが・・・)。

5段階の人事評価基準の作り方

ボクが中小企業経営者のコーチングの現場で使っている「5段階評価」を紹介します。

【0点】があるから実は6段階評価

ボクがお勧めしている「5段階」は、おおむね次のようなステップにしています。

  • 【1点】理解・納得レベル
  • 【2点】行動レベル(日常業務において補助者等を必要とする)
  • 【3点】成果レベル(日常業務に支障はない)
  • 【4点】習慣・安定レベル(イレギュラーなことも対応できる)
  • 【5点】相互支援レベル(他者の指導・組織内外への拡散)

ちなみに、見た目は「1~5」なので、5段階に見えますが「1点にも満たない」というケースがあるので「0点」もあります。よって結果として「6段階評価」として機能します。

以下「コミュニケーション・スキル」を例に紹介します。

この「コミュニケーション・スキル」は、評価の着眼点として「正確」「タイムリー」「適切な手段」という3つのキーワードが設定されています。

【1点】理解・納得レベル

情報の受発信の重要性を理解し、納得している

「コミュニケーションスキルとは、チーム内における情報の受発信のスキル」と定義していますが、良好なチームワークのためには、一人一人が情報を「正確」に「タイムリー」に「適切な手段」で受発信することが求められます。

この定義を「正しく理解している」「確かに!と納得している」と認めることができれば【1点】はクリアですが、次のステップである「発信(行動)」が少ないと評価されれば【2点】を与えることはできません。

ちなみに「正確」「タイムリー」「適切な手段」という着眼点である3つのキーワードが頭になく「コミュニケーションってみんなと仲良くやることでしょ!」なんて勘違いをしているようなら「理解してない」という評価になり【1点】も上げられない・・・【0点】となります。

このように【1点】のレベルでは着眼点=キーワードを、正しく理解し、納得しているかを評価します。

【2点】行動(日常業務において補助者等を必要とする)

情報の受発信の重要性を理解・納得し、行動しているが、日常業務において支障がでることがある

コミュニケーションのキーワード「正確」「タイムリー」「適切な手段」のいずれかが欠けてコミュニケーションエラーの原因となるようなことがあるなら「理解納得し、行動はしているが成果には足りない」として【2点】となります。

  • 一生懸命発信しているが、いつもタイミングが悪い社員
  • 緊急事態なのに、その連絡にパソコンメールを使う社員
  • 発信する情報の正確性が疑わしい社員
  • 日常業務に必要な情報を自分から受信しようとせず「聞いてないです」と平気で宣うような社員

などが、このレベルによくあるシーンです。

【3点】成果レベル(日常業務に支障はない)

適切に情報の受発信を行い、日常業務においてエラーは少ない

日常業務において、常に「正確」に「タイムリー」に「適切な手段」で情報の受信・発信を行っており、ほとんどエラーはなく「平時の日常においては支障がない」というレベルなら【3点】です。

【4点】習慣・安定レベル(イレギュラーなことも対応できる)

常に適切なコミュニケーションを実践しており、その安心感・安定感があり、周囲の信用を得ている。よってイレギュラーな対応も任せられる。

正しいコミュニケーションが「思考習慣」「行動習慣」となっていると認められれば【4点】です。

【3点】との違いは、日常業務を超えてイレギュラーな対応も安心でき周囲の信用を得ている状態です。

また、日常の言動から「しなければならない=義務感」ではなく「するべきだ=責任感」というレベルの思考を認めることができたり、また「受動的姿勢」ではなく「能動的姿勢」に達していると認められる状態なら【4点】です。

ただ、満点=5点に足りないのは「同僚、後輩へのアドバイスや働きかけ、動機付けなどの指導・拡散の行動」です。

【5点】指導・拡散

自ら手本となるコミュニケーションを実現しており、組織全体のコミュニケーションスキルを改善・向上させるため、他者にも働きかけている

各評価基準の「満点」は「個人」から「指導者」へのレベルアップです。

他者の課題を発見し「なにか自分にサポートできることはないか?」等を考え、他者に関与する姿勢が認められると【5点満点】となります。

ボクは「社員のあるべき姿」は「チームの成長のために、自分だけではなく、他者のレベルアップにも貢献する姿」です。「みんなで成長して、良いチームにしよう!」と積極的に行動している社員の姿は、すべての経営者が求めるところだと思います。

ここで紹介している「5段階評価」は「あるべき姿」に成長するプロセスを表しています。

5段階の人事評価基準の使い方

人事評価基準は社員研修のテキスト

さて、この「人事評価基準」の使い方ですが、結論は「社員研修のテキスト」として使うのが最も望ましいです。

前述したように「人事評価基準」は「経営者が求める社員のあるべき姿」をリスト化したものです。「こんな社員に成長して欲しい」という経営者からのメッセージでもあります。

(参考)人事評価基準は「好みのタイプ」を伝えるメッセージ

印刷して「よく読んでおくように」と配布するだけで伝わればいいのですが、残念ながらそこまでは期待できません。

定期的に「人事評価基準」をテキストにして研修を行うことは意識付けにとても効果的です。半年に一回「あ~そろそろ人事評価の季節だなあ~」と思い出す、というような使い方では「成長支援ツール」としての効果は望めません。

人事評価基準は社員研修のテキストとして活用することを強くお勧めします。

1on1、個人面談の目的は2つ

また、人事評価に個人面談は不可欠です。

半年に1回以上(当社は四半期ごと)全社員と30分~1時間の個人面談を実施しましょう。この個人面談の目的は2つ。

  • 評価者の評価と本人の評価のギャップ確認
  • レベルアップのアドバイス

一つの目的は、評価者と本人の評価のギャップ確認です。

個人面談に際して事前に「自己評価」を提出してもらいます。この本人の「自己評価」と、評価者の「評価者評価」が一致していればいいのですが、現実は複数の項目でギャップが発生します。

  • 自己評価:3点:日常業務に支障はないレベル
  • 評価者評価:2点:日常業務にまだ補助者が必要なレベル

という具合です。

どちらの評価が正しいのか?両者が「事実に基づいて」話し合いこのギャップを埋めなければなりません。そのための個人面談です。この手間を省くと「(本人)正当に評価されてない」「(評価者)彼は自信過剰だ」なんて、イヤなトラブルになってしまいます。

もう一つの目的は「レベルアップのアドバイス」。

現状の評価が【2点】だとします。どうすれば【3点】にレベルアップできるか?について、具体的にアドバイスし、加えて成長への動機づけを行うことも個人面談の重要な目的です。

成長支援型人事評価」のキモです。

5段階を10段階にしてはならない!

見た目は「5段階」なのに実質「10段階」になってしまうことがあります。

どういうことか?というと「3点と4点の間」というような取り扱いです。

評価の実務では3点か?4点か?を迷うことがあります。そんなとき「3.5」なんて中途半端な点数を付けたくなりますが、これは「絶対ダメ!」です。

次の段階に達していなければ【3点】なのです。「3.9」なんだけど・・・と感じても【4点】に達していないのであれば【3点】なのです。

その理由は「端数の不公平」を防止することです。人事評価の結果を給与や賞与に反映するなら、この「端数」で不公平が生じてしまいます。

例えば・・・

「3.5」が、4つあれば、合計で「2点」アップ。
「3.1」だったら、「0.4点」アップ。
「3.9」だったら、「3.6点」アップ。

「0.1」と「0.9」の違いはナニ?と聞かれても、答えは非常に曖昧にならざるを得ません。これを考え始めるとキリがありません。あくまでも「達成すればランクアップ」なのであり、もうちょっとで達成しそう、という「惜しい」を点数化してはなりません。ばっさり5段階(6段階)で評価することに注意してください。

まとめ

以上、人事評価の目的と5段階の人事評価基準について紹介しました。改めて確認しておきます。

  • 【0点】理解も納得もしてない。行動もしていない
  • 【1点】理解・納得レベル
  • 【2点】行動レベル(日常業務において補助者等を必要とする)
  • 【3点】成果レベル(日常業務に支障はない)
  • 【4点】習慣・安定レベル(イレギュラーなことも対応できる)
  • 【5点】相互支援レベル(他者の指導・組織内外への拡散)

各段階について、この5つ(6つ)の「境界線」を明確にすることが「人事評価基準」を作るコツです。これを丁寧に作ることで、使いやすいものに仕上がるはずです。

お役に立ちますように!

30年以上、税理士として数百名の中小企業経営者と向き合ってきた経験から、独自のメソッドで成長志向経営者の「想い通り経営」をサポート。特に、管理会計を活用した業績分配制度の設計、運用フォローに定評がある。20~40代の若手経営者の兄貴的存在として多くの支持を得ている。1961年生丑年蠍座。