「経営者の会計力」数字で語るプロ顔負けのチカラ

この記事のポイント

経営者なら誰でも数字に強くなって

  • 「自社の現状を正しく把握し、経営課題を明確にしたい」
  • 「金融機関に対して自分の言葉でプレゼンしたい」
  • 「資金繰りでジタバタしたくない」

と思っている。それを実現するための経営スキルが「会計力」だ。

想い通り経営」に必要な「経営者の心技体」。ここでは「技」の中でも経営スキルの大切な一つ「経営者の会計力」について、その大切さと、改善のヒントを紹介しよう。

「数字に強い」とは「数字で語れること」

「心技体」の「技」は、「基礎スキル」と「経営スキル」の2つに分けているが「経営スキル」は、経営者必修の大切な実務スキルだ。

心技体

その一つである「会計力」は「自社のことを数字で語るチカラ」と定義している。

「語るチカラ」としている理由は「わかったつもり」では困るからである。ご存知のとおり、誰かに説明するには自分自身が正しく理解しておく必要がある。あなたにも「理解が不十分だったので、うまく説明できなかった」という経験があると思う。

経営者には、数字に強くなって、他者に分かりやすく説明できるレベルで、自社の数字を正しく理解し把握してほしい、という思いで「数字で語るチカラ」と表現した。

経営課題を正しく把握するための会計力

「課題」とは「あるべき姿」と「現状」のギャップである。経営課題を正しく把握するためには、この2つの要素である「あるべき姿」と「現状」を明確にしなければならない。

(参考)「経営者の課題解決力」課題発見と解決への執念のチカラ

まずは試算表や決算書を読解し「現状(=当社は現在どういう状態なのか?)」を正しく理解し、把握しなければならないが、そのためには最低限の会計知識が必要だ。

試算表や決算書をていねいに説明してくれる顧問税理士が、いつも寄り添ってくれるなら大丈夫?と思うかもしれないが、残念ながらそうではない。最低限の会計知識を持ち合わせていないと、税理士がどれだけていねいに説明しても、「わかったつもり」になるだけで、残念ながら「支払う税金の見積もり」くらいしかあたまに残らないだろう。

*余談であるが、ボクの税理士30年超の経験から断言できるのは、「経営視点で決算書の説明ができる税理士は少数派」である。残念ながら、彼らの多くは「税金のプロ」であって、「会計のプロ」でもなく、ましてや「経営のプロ」ではない。

一方で、必要な会計知識をもって「現状把握」はできたとしても「あるべき姿」を知らなければ、「経営課題」を明確にすることはできない。

たとえば、試算表や決算書を見て「現状の人件費率は50%だ」とわかったとしても、「人件費率のあるべき姿は何%?」を知らなければ、その50%が良いのか悪いのかがわからない。最悪の場合は、そもそも課題があることに気付かない。

(例)【人件費の上限】限界利益の40%を超えるとヤバイ!?

限界利益に対する人件費の割合

つまり、経営課題を正しく把握するためには、「現状」を会計情報から読み取り「あるべき姿」とのギャップを明確にしなければならない。

行き過ぎた節税で自爆する・・・

節税ニーズが悪いのではない。少しでも税金をおさえたいのは、税理士経験30年超のボクも同じだ。ムダな税金は払いたくない。よくあるのは、経費の計上漏れによる払い過ぎだ。「ムダ=本来は払う必要のない税金」まで払う必要はないが、「会計力」が弱い経営者は「経費計上が漏れていることに気付かない」ということも少なくない。

ただ、ここで言いたいのは、そういうこまかい話ではない。

「自爆」は言い過ぎかもしれないが、ボクはいままで税理士として「節税して納税をおさえれば手元のキャッシュが増える」と誤解している多くの経営者に出会ってきた。「節税のために、もっと経費を使えばよい」と信じて疑わない人たちだ。会計がわかっていればそんな「無駄遣い」はしない。

念のため、簡単な例を示そう。

利益が1000万円も出ているので、このままでは約400万円の納税をしなければならない。どうしようか?・・・そうだ!経費を使って利益をゼロにすれば、納税はしなくていいやん!

すでにおわかりだと思う。この経営者の手元にキャッシュは残らない。せっかくの利益である1000万円を使い切ったのだから。いさぎよく約400万円の納税をすれば、手元に約600万円が残るはずだった。

「税金を払わないと会社は大きくならない」というが、その意味を正しく理解するためにも「会計力」は経営者に不可欠なスキルなのだ。

(例)【内部留保】まずはキャッシュ1億円を目指そう!

内部留保「納税しないと会社は大きくならない」

数字で語る経営者のプロ顔負けの「会計力」、3つの共通点

数字に強く「会計力」が優れている経営者には大切な共通点がある。そのキーワードは、「月次決算」「決算分析」「資金繰り」の3つだ。もし、この「会計力」に不安を感じるのであれば、是非この3つについて自問自答してみよう。

「月次決算」にこだわる

まず最初は「月次決算」だ。「会計力」が優れている経営者は、月々の試算表は決算レベルを要求し、また、それを必ず熟読している。売上高と利益だけ、というような雑な読み方はしない。時間をかけて隅々までチェックし、違和感をおぼえたら納得するまで経理担当者や顧問税理士に質問を続ける。このリレーションによってますます数字に強くなっていく。

また、この経営者の質問は「牽制球」にもなる。数字に強い経営者は、その独特の視点で不明点や違和感を、時にはきびしく、時にはするどく質問してくるので経理担当者は手を抜けない。ごまかしが効かないので常に精度の高い経理処理を行うことになるのだ。

*ちなみに「逆もしかり」である。数字に強くない経営者が相手の場合、経理担当者も顧問税理士も緊張感が足りないことが多い。多少の雑な会計処理やミスがあっても経営者にバレないからである。

ボクは若いときから「経理担当者の常識は、経営者の非常識」という場面によく遭遇したものだ。

たとえば減価償却だ。経理担当者は「決算処理として、年に1回、年額を計上」を「常識」としていることが多い。月々の正しい利益計算を「常識」とする経営者からすれば、この「年に1回」が「非常識」極まりないことになる。

月次決算と減価償却

同様に、月次決算では「在庫・たな卸し」も毎月更新が「常識」である。ところが、これも棚卸の手間などを言い訳に「決算の時だけ」という「経理の常識」がまかり通っていることが少なくない。

このように、「月次決算」にこだわりを持っている経営者の「会計力」は、税理士などのプロも脱帽ということが珍しくない。こだわりの理由は「会社の現状を少しでも正しく把握したい」という経営者として当然のニーズそのものである。

「決算分析」が的確、己を知る

2つ目のキーワードは「決算分析」。いうまでもなく「決算書」は経営者にとって「成績表」である。1年間、一生懸命にビジネスを行ってきた結果が数字で表される。

数字に強く「会計力」が優れている経営者は、あたりまえであるが自分の成績が気になる。気になって仕方がないという経営者も少なくない。そのような経営者は「当社の決算書は良いのか?悪いのか?」と、その評価を自ら「自己診断」することができる。

そのレベルがよくわかるのは、金融機関へのプレゼンだ。「会計力」に優れた経営者は、自分の言葉で自社の決算内容を銀行の担当者に説明することができる。そこに顧問税理士として何度か同席したことがあるが「会計力」が優れた経営者の場合、ボクは「座っているだけ」となる。その経営者の決算分析が的確であり口をはさむ余地がないのだ。1年間の成果と課題をわかりやすく説明している経営者の横で「(さすが!)」と心の中でニンマリしているだけだ。

「会計力」、まさに「(彼を知り)己を知れば、百戦するも危うからず」である。

「資金繰り」、先読みの精度が高い

そして3つ目のキーワードは「資金繰り」だ。「自社の数字に強い」ということは「先読みが正確である」ということでもある。

「会計力」が優れている経営者は、数か月後のキャッシュフローの予測精度が高く「先手」を打っている。資金に余裕があるときも、そうでないときもジタバタすることが少ない。

よく分かるのが「消費税の納税」の場面である。消費税が10%になってからは特に「預かり消費税」がキャッシュとして手元にあるので「資金に余裕がある」と勘違いしたことはないだろうか。

「会計力」に優れた経営者は「月次決算」を実施していることもあり、資金繰りの先読みの精度が高い。結果、納税資金を「別枠」でキープしていることが多い。

数字に強く、経営者として会計力が優れていることの幸福

改めて、数字に強く、経営者として会計力が優れていることの幸福を考えてみよう。

  • 自社の現状を数字で正しく把握できる
  • あるべき姿との比較で経営課題が明確である
  • 金融機関に対して自分の言葉でプレゼンできる
  • 先読みができるので資金繰りでジタバタしない

本質は、このような状態を「幸福」と感じることができるか?である。このように「数字で語るプロ顔負けの会計力」なんて「建前だ」「理想論だ」と感じてしまうならば、残念ながら「想い通り経営」は実現できない。「経営者の会計力」は「想い通り経営」に不可欠な「技」としてとても大切なチカラの一つだ。

経営者が数字に強くなる方法

さて、ここまで読んで「やっぱり、自分は数字に弱いなあ」「自分には会計力が不足しているなあ」という自覚症状があれば早速トレーニングを始めよう。

本気で「数字に強くなりたい!」と思うなら、まずは前期の「決算書」と「総勘定元帳」を熟読し、その後、継続して毎月「試算表」を読むことを習慣付けることだ。

数字に強くないのは、勉強してないから

数字に強くない経営者と話していると、その理由は共通している。

  • 「数字は大切だし、会計知識が必要なことはわかっているけど、ついつい勉強を後回しにしてしまう」
  • 「どうすれば数字に強くなれるかわからない」
  • 「数字は苦手だから・・・」

大ざっぱにいえば理由はこんなところだろう。要は「勉強してない」から当然だ。下記のステップで是非勉強してほしい。

(参考)「経営者の学習力」忙しくても継続する自己投資のチカラ

会計力を身に付ける4つのステップ

「会計力」を高めるステップは4つ。

1:決算書と総勘定元帳の熟読する

休日など、まとまった時間に前期の「決算書」と「総勘定元帳」を熟読しよう。「読む」「見る」ではなく「熟読」だ。できれば「音読」が効果的だ。(案外、読めない字に気付くかも:笑)読んでいるうちに、様々な疑問が湧いてくるはずだ。最初は「わらないことが、わからない」かもしれないが、それでもいいので続けよう。

2:毎月継続して「試算表」を読み、それを習慣付ける努力をする

熟読によって気付いた疑問を解消してくれるのは顧問税理士だろう。どんどん質問すればよい。分からないことが恥ずかしいのではない。会計を理解せず会社経営をしている方が恥ずかしいのだ。

数字に強い経営者の多くは「毎月、試算表の説明を受けている」「毎期、決算書の説明を受けている」というように、税理士とは「会計力を高めるような付き合い方」をしている。

そんな「熟読」を続けているうちに「何となくわかる」から「よくわかるようになってきた」「面白くなってきた!」と進むはずだ。

3:決算の2~3カ月前から決算の着地点を予想する

決算まであと数ヶ月という段階では、自分で「着地点」を予想してみよう。その「予想値」と「実際の決算」を見比べると、自分の見方の「間違い」「勘違い」に気付くことができる。顧問税理士の「決算予想」と比べるのも面白いだろう。

4:「予算」を立てて「予実対比」する

「会計力」が飛躍的に上がるのはここからだ。来期の「目標設定」として「予算」を作ることだ。

単純に言えば、(利益目標)=(売上目標)-(コスト目標)だ。

それぞれに目標を設定をして、その進捗状況、つまり「予実対比」を毎月おこなうことで、数字が自分が思ったように動くのか?そうではないのか?がわかる。

これを毎月継続することで

  • このペースで進めば、今期の売上は+++くらいだろう。
  • コストは予算通りに進んでいるな。
  • だから目標利益達成のために***しよう!

という思考になっていく。つまり「数字で考える」「数字に基づいて考える」ということが習慣になる、ということだ。

以上、4つのステップ。少々時間はかかるが「会計を自分のモノにする」ための「もっとも確実な方法」であり、この習慣によって身についた「会計力」は、あなたの一生の財産になる。やらない理由は見当たらない。

まとめ

以上、数字に強い経営者の会計力「自社のことを数字で語るチカラ」を紹介した。大切な視点は、「月次決算」「決算分析」「資金繰り」だ。まずは、自社の試算表と決算書を読解できるようになろう。それができるようになったら、次のステップは「管理会計」だ。こちらも是非参考にしてほしい。

(参考)中小企業が「管理会計」で成長するヒント集

「想い通り経営」を実現するための「経営者の心技体」のなかの大切な1つである。経営者の「考え方」が変われば、「行動」が変わり、望ましい「結果」に変わる。是非、参考にしてみてほしい。

お役に立ちますように!

【このブログについて】「若手経営者のための経営支援ブログ」