「経営者の会計力」数字で語るプロ顔負けのチカラ

この記事のポイント

数字のことは税理士に任せっきり、ということはないだろうか?

もしそうならばこの機会に「会計力」を見直してほしい。

「想い通り経営」に必要な「経営者の心技体」。ここでは「技」の中でも経営スキルの大切な一つ「経営者の会計力」について、その大切さと、改善のヒントを紹介しよう。

「会計力」が足りない経営者に起きる3つの不都合なこと

「心技体」の「技」は、「基礎スキル」と「経営スキル」の2つに分けているが「経営スキル」は、経営者必修の大切な実務スキルだ。

心技体


その一つである「会計力」は「月次試算表と決算書を読解することによって、経営状態を正しく把握するチカラ」と定義している。

この「会計力」が不足していると、次のような不都合が生じることがある。

経営の現状がわからない

試算表や決算書を読解できないということは、経営の現状が分からない、ということだ。丁寧に説明してくれる顧問税理士がいつも寄り添ってくれるなら大丈夫か?と思うかもしれないが、そうではない。試算表や決算書を読解できない経営者は、税理士がどれだけ丁寧に説明しても「わかったつもり」になるだけで、結局、頭に残るのは「払う税金の見積もり」くらいだ。だから、会計力が不足している経営者の多くは、自社の現状がわからない。重傷者に至れば、残念ながら「分かってないことが分かってない」「分からなくても気にならない」である。

*余談であるが、私の税理士30年の経験から断言できるのは「経営視点で決算書の説明ができる税理士は少数派」である。残念ながら彼らの多くは「税金のプロ」であって「会計のプロ」でもなく、ましてや「経営のプロ」ではない。

あるべき姿を知らない

仮に試算表や決算書を読解できたとしても、その「あるべき姿」を知らなければ、課題が見えないので「会計力」は十分とは言えない。

例えば「現状の人件費率は50%」だ、と読解=分かったとしても「何%が理想なのか?」が分からなければ「50%が良いのか?悪いのか?わからない」ということになる。つまり「読解」できたとしても「良し悪し」が判断できないのだ。

つまり「読解」は、現状の把握のための手段であり、併せて「あるべき姿」を知っておかないと「経営課題」を見つけることが出来ず、経営は改善に向かわないのだ。「課題=あるべき姿ー現状」である。

節税に走ってしまい自爆する・・・

「自爆」は言い過ぎか・・・。何が言いたいか?というと「会計力が不足している経営者は節税ニーズが強い」という傾向が高い。これは、私の経験からの共通点である。

少しでも税金を抑えたいのは、税理士経験30年以上の私も同じだ。ムダな税金は払いたくない。ここでいうムダは「本来は払う必要のない税金」という意味である。その多くは、経費の計上漏れ、特例の適用忘れなど、ウッカリによる払い過ぎには注意が必要だ。

ところが「本来払うべき税金」は、過度な節税は控えて納税しないと「自爆」することになりかねない。その典型的なのが「節税のために経費を使う」というパターン。会計が分かっていればそんな「無駄遣い」はしない。念のため、簡単な例を示しておくので参考にしてほしい。

  • 利益:1億円×税率:40%=納税:4000万円
  • 4000万円の納税をゼロにするために「1億円の経費を使いまくる」
  • 利益:ゼロ×税率40%=納税:ゼロ
  • 4000万円の節税成功!?
  • 「節税」したために「納税後資金」はカラッポ・・・
  • 「節税」しなければ、手元に6000万円の資金が残ったはずなのに・・・資金繰りがキツイ!

数字で語る経営者のプロ顔負けの「会計力」、3つの大切な視点

この「会計力」が優れている経営者には大切な共通点がある。そのキーワードは、「月次決算」「決算分析」「資金繰り」の3つ。もし、この「会計力」に不安を感じるのであれば、是非、この3つの視点について自問自答してみよう。

「月次決算」にこだわる

まず、最初は「月次決算」だ。「会計力」が高い経営者は、月々の試算表は必ず熟読している。売り上げと利益だけ、というような雑な見方はしない。時間をかけて隅々までチェックし、違和感を感じたら納得するまで、経理担当者や顧問税理士に質問を続ける。

これは「牽制球」にもなる。数字にうるさい経営者は、経営者独特の視点で、不明点や違和感を厳しく質問してくるので経理担当者は手を抜けない。ごまかしが効かないので常に精度の高い経理処理を行うことになるのだ。

「経営者の常識は、経理担当者の非常識」というフレーズがあるが、例えば、減価償却。経理担当者は「決算処理として、年に1回、年額を計上」を「常識」としていることがある。月次決算を「常識」とする経営者からすれば、この「年に1回」が「非常識」極まりないことになる。同様に、月次決算においては「在庫計上」も毎月が「常識」である。ところが、これも棚卸の手間などを言い訳に「決算の時だけ」という「経理の常識」がまかり通ていたりすることが少なくない。

このように「月次決算」にこだわりを持っている経営者の「会計力」は税理士などプロも脱帽、ということが珍しくない。

決算分析が的確

2つ目のキーワードは「決算分析」。言うまでもなく「決算書」は、経営者にとって「成績表」である。1年間、一生懸命ビジネスを行ってきた結果が数字で表される。

「会計力」の高い経営者は、自分の成績が気になるのだ。気になって仕方がない、という経営者も少なくない。そのような経営者は「当社の決算書は良いのか?悪いのか?」と、その評価を自ら「自己判断」することができる。

そのレベルがよくわかるのは、金融機関へのプレゼンだ。メインバンクを中心に「決算がまとまったので、報告します」と自ら出向く経営者もいるが「会計力」が高い経営者は、自ら、自分の言葉で決算内容を銀行担当者に説明する。そんな場面に顧問税理士として何度か同席したことがあるが、私は「座っているだけ」になる。「補足することがない」からだ。自社の決算分析が的確であり、そのうえで「成果」と「課題」を説明している、そんな経営者の横で感心することしきりである。

資金繰りに余裕がある

そして3つ目のキーワードは「資金繰り」だ。自社の数字に明るい、ということは「先読み」が正確である、ということでもある。したがって、数か月後のキャッシュフローの予測精度が高く「先手」を打っている。資金に余裕があるときも、そうでないときもジタバタすることが少ない。

それが最も分かるのが「納税」の場面である。ビジネスの資金繰りは、ほとんどの経営者は「カン」もはたらくので、支障は少ないが、納税のことはすっかり抜け落ちていることが少なくない。特に消費税が10%になってからは「預かり消費税」がキャッシュとして手元にあるので、勘違いすることも多い。しかし「会計力」が高い経営者は「月次決算」を実施していることもあり、納税資金は「別枠」としてキープしていることが多く、余裕を感じさせてくれるものだ。

経営者として「会計力」が優れていることの幸福

改めて、経営者として「会計力」が優れていることの幸福を考えてみよう。つまり「経営者の会計力が優れている」とは、どういう状態なのか?だ。

月次決算や決算分析によって、自社の現状を正しく把握し
あるべき姿との比較によって、
経営課題を数字で把握し、スピーディーに解決策を講じている。
また、リアルタイムで数字を把握していることによって
資金繰りを先読みし、先手を打つことにも抜かりがない状態

本質は、このような自分の状態を「幸福」と感じる「心」を持っているか?である。このように「数字で語るプロ顔負けの会計力」は「建前論」と感じてしまうならば残念ながら「想い通り経営」は実現できない。

「経営者の会計力」は、「想い通り経営」に不可欠な「技」としてとても大切なチカラの一つだ。

あなたは何点?

1点:理解レベル
このチカラについて「理解」はできるが「納得・賛同」はできない。

2点:納得・賛同レベル
このチカラが必要なことは「納得・賛同」できる。しかし、身につけるには自信がなく、それによる不都合は受け入れるしかない。

3点:行動レベル
このチカラ不足によると思われる経営上の不都合が起きているので、このチカラを身につけようと目下「トレーニング中」である。

4点:習慣レベル
このチカラ不足が原因の経営上の不都合は起きていないので、この考え方、行動は習慣化しており合格レベルだと思う。

5点:指導者レベル
このチカラは当社の管理者や幹部クラスにも必要なので、自らが模範となって指導している。

「会計力」をトレーニングする方法

さて、ここまで読んで「心が痛い」と感じた人、つまり「自分には会計力が不足しているな」という自覚症状があれば早速トレーニングを始めよう。

本気で「会計に強くなりたい!」と思うなら、前期の「決算書」と「総勘定元帳」を熟読し、その後、継続して毎月「試算表」を読むことを習慣付けることだ。

強くないのは、勉強してないから

会計に強くない経営者と話していると、その理由は、共通している。

  • 「大切だし必要なことはわかっているけどついつい後回しにしてしまう」
  • 「どうすれば強くなれるかわからない」。

大ざっぱに言えば理由はこの2つ。要は「勉強してない」から当然だ。

会計力を身に付ける4つのステップ

「会計力」を高めるステップは4つ。

1:決算書と総勘定元帳の熟読する

休日など、まとまった時間に前期の自社の「決算書」と「総勘定元帳」を熟読しよう。「読む」「見る」ではない、「熟読」だ。できれば「音読」が効果的だ。(案外、読めない字があるかもしれない:笑)読んでいるうちに、様々なギモンが湧いてくるはずだ。最初は、分からないことが分からないかもしれない。

2:毎月継続して「試算表」を読み習慣付ける努力をする

熟読によって気付いた疑問を解消してくれるのは顧問税理士だろう。どんどん質問すればよい。分からないことが恥ずかしいのではない。会計を理解せず会社経営をしている方が恥ずかしいのだ。

会計に強い経営者の多くは「毎期、決算書の説明を受けている」「毎月、試算表の説明を受けている」というように税理士とは「自身の会計力を高めるような付き合い方」をしている。

そんな「熟読」を続けているうちに「何となくわかる」から「よくわかるようになってきた」「面白くなってきた」と進めばシメたものだ!

3:決算の2~3カ月前から決算の着地点を予想する

決算まであと数ヶ月という段階では、自分で「着地点」を予想してみよう。その「予想値」と「実際の決算」を見比べると、自分の見方の「間違い」「勘違い」に気付くことができる。顧問税理士の「決算予想」と比べるのも面白いだろう。

4:「予算」を立てて「予実対比」する

「会計力」が飛躍的に上がるのはここからだ。一年間の「予算」を立てることは「目標設定」をすることだ。

単純に言えば(売上目標)-(コスト目標)=(利益目標)だ。

それぞれに目標設定をして、その進捗状況を毎月確認することで、数字が自分が思ったように動くのか?そうではないのか?がわかる。

これを毎月継続することで

  • 売上は、このペースでいいのか?
  • コストは予算内に収まっているのか?
  • だから目標利益のために***しよう!

という思考になっていく。つまり「数字で考える」「数字に基づいて考える」ということが習慣になる、ということだ。

以上、4つのステップ。少々時間はかかるが「会計を自分のモノにする」にはもっとも「確実な方法」であり、こうして習慣化した「会計力」は、あなたの一生の財産になる。やらない理由は見当たらない。

【参考】習慣化のステップ
  • 理解レベル:理解できる。
  • 納得レベル:納得でき、賛同もできる。
  • 行動レベル:高めなければならない=MUST)と思い行動を続ける
  • 習慣レベル:MUSTからWANT(=高めたい)に変化する

まとめ

以上、経営者の会計力「数字で語るプロ顔負けのチカラ」を紹介した。大切な視点は、「月次決算」「決算分析」「資金繰り」だ。「想い通り経営」を実現するための「経営者の心技体」のなかの大切な1つである。経営者の「考え方」が変われば、「行動」が変わり、望ましい「結果」に変わる。是非、参考にしてみてほしい。

お役に立ちますように!

【このブログについて】「若手経営者のための経営支援ブログ」

経営者が知っておくべき数字は5つ、それは”マネジメント会計”にある

経営が見える”マネジメント会計”

「マネジメント会計」とは、経営者のための会計です。
一般的に、決算書や試算表は「財務会計」というルールで作成されており、その目的は「外部報告」です。
それに対して「マネジメント会計」は、経営者のための会計であり、その目的は「内部報告」です。

決算書や試算表は「財務会計」は「外部報告」が目的なので「共通のルール」があります。
外部、つまり銀行や税務署が誤解しない様に「共通のルール」で作成しているのです。
それに対して「マネジメント会計」は「内部報告」が目的、いわば「内輪の会計」なので、他者とルールを合わせる必要はなく「自社のルール・独自のルール」で作成します。

経営者が、自分のために自由に作成するのが「マネジメント会計」です。

具体的には・・・

一例を上げましょう。

どこの会社の決算書や試算表にも計上されている「通信費」。
この「通信費」には、電話代、インターネット代、さらに、郵便切手代まで含まれているのが一般的です。
「世間のみんながそのように処理しているから」です。

違和感ありませんか?

レンタルサーバーなどの「ネットのコスト」と「切手やはがきのコスト」と一緒って?

マネジメント会計では「自由」なので、必要であれば

「通信費」を「郵送通信費」「電話通信費」「ネット通信費」に分ける、ということが可能です。

変動費と固定費

マネジメント会計のもっとも特徴的なのは「コスト」を「変動費」と「固定費」に区分することです。
あなたの会社の決算書や試算表を見てください。
多くの会社では「売上原価」と「販売費および一般管理費」に区分されています。
それが「財務会計」のルールだからです。
この区分では経営には役に立ちません。
経営者が把握しなければならない「損益分岐点」が見えないのです。

マネジメント会計は「収益体質の把握」が経営に重要と考えるのでコストを「変動費」と「固定費」に区分します。

それは「損益分岐点」をハッキリさせるためです。

「損益分岐点」とは「損益がトントンになる点」ですが、この「点」は「粗利(アラリ)」です。

毎月の「固定費」が1000万円であれば、
1000万円の粗利を稼げばトントンです。