【業績連動型】賞与に限定?それとも年俸ベース?

中小企業が「業績連動型の給与賞与制度」を設計する場合に、業績に連動させるのは「賞与に限定」とするか?それとも「年俸ベース」で適用するかを検討しましょう。

先に言っておくと、ボクの結論は「年俸ベースが望ましい」ですが、この検討について、どのような意見や事情があるか?を解説します。

あなたの会社の「業績連動型の給与賞与」を検討する際の参考になれば幸いです。

「賞与限定」と「年俸ベース」の違い

詳細の前に検討する両者を整理しておきます。

業績に連動させるのは「賞与」に限定する方法

給与は本人の人事評価の点数だけで計算し、業績には連動させず、一方、賞与は給与とは別に業績に連動させて計算する方法です。

「年俸ベース」で業績に連動させる方法

給与賞与の総額を、人事評価の結果で分配し「年俸」を確定する方法です。この方法の場合、「年俸」から「給与」を差し引いた残額が「賞与」となります。仮に月々の給与が残業等によって増えれば、賞与は減る、という関係です。

なぜ、年俸ベースがいいのか?

その理由は「給与が適正でないことが多い」からだ。中小企業に「業績連動型」を導入するときに「障害」となるのが「既存のルール」である。既存の「給与」を急激に変更することはできないので「現状の給与」を守りながらの導入になる。

よくあるケースは、人事評価の結果が同点の二人が「同一の給与ではない」という事例だ。例えば、一方は採用時の事情で「前職の給与を保障」ということで「調整給」が加算されていたり「何かの事情」で意味不明の手当てが加算されていたりするケースだ。

人事評価で同点の二人を簡単な計算例で示してみます。

  • A君:月給30万円
  • B君:月給30万円+調整給3万円=33万円

この二人の「賞与」は、人事評価で同点なので「同額」にならなければなりません。しかし「賞与に限定」して制度設計すると、同点であるにも関わらず、B君の年俸は調整給の分だけ@3万円×12=36万円、A君より多くなります。

一方で「年俸ベース」で計算し、同点の二人はそれぞれ「年俸が400万円」になったとすると両者の賞与は・・・

  • A君:年俸400万円-(給与@30×12)=賞与40万円
  • B君:年俸400万円-(給与@33×12)=賞与 4万円

となります。このケースだと二人の賞与は10倍の差になりますが「年俸は公平」になります。

ボクは「同じ評価」なら「同じ年俸」とすべき、という考え方から「年俸ベース」をお勧めしているのです。

ただし「急激な変化」が、トラブルになれば台無しになってしまうので「方向性として年俸ベース」とし、数年をかけて段階的に歩み寄る、ということもあるので書き添えておきます。

年俸ベースの実務

「年俸ベース」の実務について、もう少し詳しく紹介します。

業績に応じて「年俸」を計算し、それを「決算賞与」で反映することになります。

給与=基準給(=基本給+評価給)+役職手当

給与は、業績に連動させず、「基本給」「評価給」「役職手当」の3要素が基本形です。人事評価の結果は「評価給」として反映しますが、一般的に「評価点@1点あたり1,000円」というようにレートを決めて計算します。

例えば、人事評価の点数が60点のC君を例に示してみると・・・

(基本給18万円)+(評価給6万円)+(役職手当5万円)=(月給29万円)

というイメージです。(*各レートは会社ごとに決めます。念のため。)

賞与=夏季+冬季+決算

賞与は、年2回が一般的ですが「業績連動型」は、決算における業績を反映することが多いので「決算賞与」を含めて3回にします。

業績が反映するのは「決算賞与」なので、夏季と冬季は「月給の1か月分」というように分かりやすいルールで支給することをお勧めしています。

この場合「決算賞与」は、下記のような計算となります。

(決算賞与)=(年俸)-(基準給×12)-(夏季+冬季)

簡単に言えば「おつり」です。確定した年俸から、すでに支給済みの給与や賞与を差し引いて計算することになります。

注意点は「月給」ではなく、役職手当を除く「基準給(=基本給+評価給)」で計算するところです。「月給」にしてしまうと「役職手当」の分だけ決算賞与が減ってしまうからです。

足りない場合はどうするか?

上記の計算をする場合「計算結果がマイナスになる」ことが想定されますが、その場合は「決算賞与なし」ということになります。ゼロはマズいので、少し支給したい、という相談を受けることがありますが、その場合はあらかじめ「ルール」に「最低保証額」というように盛り込んでおくことが重要です。

「ルール」に記載がない賞与を支給することは避けるべきです。ルール外の賞与に社員たちは喜んでくれますが、そのリバウンドがリスクとなります。「業績が悪くてマイナスになっても社長は決算賞与を支給してくれる」という前例を作ることになってしまいます。これをやってしまうと「業績連動型」が根底から崩れてしまい「形骸化」するので、気を付けましょう。

まとめ

以上、業績連動型の給与や賞与を導入する際に、賞与に限定するか?それとも年俸ベースにするか?について解説しました。

業績分配の公平性を保つために「年俸ベース」とするべきですが、すでに給与制度が整備されており、給与段階での不公平が生じていないのであれば「賞与のみ」でもまったく問題ありません。「年俸ベース」をお勧めするのは「給与の不公平」を是正する目的もあるからです。

あなたの会社の給与の状況等を考慮して検討してみてください。

お役に立ちますように!

30年以上、税理士として数百名の中小企業経営者と向き合ってきた経験から、独自のメソッドで成長志向経営者の「想い通り経営」をサポート。特に、管理会計を活用した業績分配制度の設計、運用フォローに定評がある。20~40代の若手経営者の兄貴的存在として多くの支持を得ている。1961年生丑年蠍座。