【管理会計】収益力をアップする為の6つのチェックポイント

管理会計のメリットは、収益性を改善するための課題が明確になることだ。この記事では「限界利益」「人件費」「創造付加価値」「事業利益」「税引後純利益」「内部留保」の6つの視点とチェックポイントを詳しく解説する。

経営者がこれらに詳しくなると多くの場合、会社の収益性が改善する。なぜなら「収益体質の課題が明らかになるから」である。ぜひ、ゆっくり熟読して「管理会計に詳しい経営者」になってほしい。

経営損益計算書と一般の損益計算書との違い

あなたの手元にある「損益計算書」は、いわゆる「財務会計」のルールで作成されたものだと思う。この目的は「外部公表」である。金融機関や税務当局に「当社の売上~利益はこうですよ」と知らせることが目的だ。

外部公表が目的なので、公のルールに基づいて作成されている。独自のルールで作成すると、見せられた外部の者は「見方が分からない」「信用ならない」ということになるからだ。

売上高380,000
売上原価260,000
売上総利益120,000
販管費98,000
営業利益22,000
営業外損益△ 4,000
経常利益18,000
特別損益4,000
税引前純利益22,000

一般的に「損益計算書」は、左記のようなフォーマットになっている。

*左記の数字は、サンプルなので、できればあなたの会社の損益計算書を手元に持ってきて読み進めてみてほしい。

この「損益計算書」は、前述したように「財務会計」のルールで作成されていて「過去を報告すること」が主目的になっている。残念ながら「経営を改善すること」は考慮されていない。

したがって「収益性の分析」をしようとすると電卓を持ち出して様々な指標の計算が必要になる。

その面倒な「電卓を叩いて分析する」ということをしなくてよいように「組み換え」したものが「経営損益計算書」であり、下記のようなフォーマットになっている。

売上高(*)380,000
変動原価280,000
限界利益100,000
事業コスト67,000
創造付加価値33,000
経営コスト10,000
事業利益23,000
事業外損益△ 2,000
経常利益21,000
臨時損益1,000
税引前純利益(*)22,000

最初と最後、つまり「売上高」と「税引前純利益」は、当然ながら「同じ」である。

「コスト」のカテゴライズを「経営視点」に組み替えると左記の「経営損益計算書」になる。

ちなみに、このフォーマットは、当社(マーカス・マネジメント)のオリジナルであり「当社がルールブック」である(笑)。この自由度が管理会計の魅力である。外部公表ではなく、あくまでも「社内利用」が目的なので、一般的なルールに従う必要は全くない。

上記の「損益計算書」の「売上原価」「販管費」「営業外損益」「特別損益」をガラガラポンして「変動原価」「固定コスト」「経営コスト」「事業外損益」「臨時損益」に組み替えたものだ。

財務会計

  • 売上原価
  • 販管費
  • 営業外損益
  • 特別損益

組み換え

管理会計

  • 変動原価
  • 事業コスト
  • 経営コスト
  • 事業外損益
  • 臨時損益

限界利益と変動原価

二つの「損益計算書」を比べてみて、最も特徴的なのは「売上総利益」と「限界利益」である。

売上高380,000
売上原価
・仕入

260,000
売上総利益120,000
財務会計の「損益計算書」(抜粋)
売上高380,000
変動原価
・仕入
・荷造運賃

260,000
20,000
限界利益100,000
管理会計の「経営損益計算書」(抜粋)

「変動原価」は、一般の「変動費」と同じである。「変動」とは「売上に連動して変化する」という意味であり「固定していない」という意味ではないので勘違いしないように注意しよう。

財務会計の「売上原価」は、主に仕入原価と、せいぜい外注費くらいまでしか含まれていないので「売価100円当たりの利益」が明示されていない。

「変動原価」も、仕入れや外注費が主なものであるが、それ以外に、商品のデリバリーコストである「荷造り運賃」や、代理店等に支払う「支払手数料」や、「ロイヤリティ」などを含む。これらは「財務会計」の場合「販管費」に含まれていることが多い。

事業コストとは?

「事業コスト」は、後述する「経営コスト」を除いた固定費が中心である。

原則として「毎期固定して必要なコスト」が含まれる。したがって「たまたま発生したコスト」は、この「事業コスト」ではなく、後述する「臨時損益」に含まれる。

例えば、設備の定期メンテナンスのコストが発生すれば、それが毎期のことであれば、その「維持修繕費」は「事業コスト」に含まれる。一方で設備が壊れたので、その修理コストが発生した、という場合は「たまたま」なので「臨時損益」に含む、という具合だ。

経営コストとは?

簡単に言えば「経営者の意思や意図で増減が自由なコスト」である。例えば、役員報酬「来期は報酬ゼロで頑張る」ことは(気持ちは別にして)可能だ。同じことは社員にはできない。「家賃」は自分の意図で下げられないが「交際費」はその余地はある、という具合だ。「販管費」の中には、このような「増減できないコスト」と「工夫できるコスト」が混在しているので、それを「分離」しているのだ。

一般的には・・・

  • 役員報酬
  • 接待交際費
  • 役員生命保険料
  • 研究開発費
  • 投資人材採用費
  • その他経営コスト

などが計上されている。

事業外損益とは?

文字通り「事業には直接関係のない損益」である。注意点は「毎期発生する予定の損益」である。科目的には「雑収入」や「受取配当金」などが一般的だ。

「財務会計」の「営業外損益」に計上されている「支払利息」は「管理会計」では「事業資金の調達コスト」との考え方から、上記の「固定コスト」に計上することが多い。

ちなみに、新型コロナ関連の給付金は「毎期は期待できない」ので、下記の「臨時損益」である。

臨時損益とは?

「毎期発生しない損益」「たまたま発生した損益」は「臨時損益」として「事業評価」から外す。「経営損益計算書」の目的は「本業によってどれだけの収益力を持っているか?」と測ることである。したがって「本業とは関係ないもの」は「事業外損益」とともに別枠の扱いをすることになる。

黒字企業の損益計算書は理想のバランスを保っている

私は、税理士として30数年にわたって多くの中小企業の決算書を作成したり、解析したりの過程で、ひとつの目安として「黒字企業の標準」を整理した。

黒字体質の標準値」であり、これを「損益計算書の理想のバランス」と言っている。

毎年、着実に内部留保を蓄積し、どんどん「強固な財務体質」を構築している黒字企業、それに対して、中々収益性が高まらない企業、さらには抜け出せない赤字企業など、それぞれ、「理想のバランス」という「物差し」に当てはめると「どこに課題があるのか?」が一目瞭然である。

この「損益計算書の理想のバランス」についてご紹介しよう。

2社のまったく同じ損益計算書を「経営損益計算書」で比較してみた

A社の損益計算書(財務会計)

売上高380,000
売上原価260,000
売上総利益120,000
販管費98,000
営業利益22,000
営業外損益△ 4,000
経常利益18,000
特別損益4,000
税引前純利益22,000

B社の損益計算書(財務会計)

売上高380,000
売上原価260,000
売上総利益120,000
販管費98,000
営業利益22,000
営業外損益△ 4,000
経常利益18,000
特別損益4,000
税引前純利益22,000

上記のA社とB社を見比べてみよう。まったく同じだ。優劣の見分けができない。しかし、この両者の「経営損益計算書」を作成してみると・・・(単位:千円)

A社の経営損益計算書(管理会計)

売上高380,000
変動原価280,000
限界利益100,000
事業コスト★67,000
創造付加価値33,000
経営コスト★10,000
事業利益23,000
事業外損益△ 2,000
経常利益21,000
臨時損益1,000
税引前純利益22,000

B社の経営損益計算書(管理会計)

売上高380,000
変動原価280,000
限界利益100,000
事業コスト★74,000
創造付加価値26,000
経営コスト★3,000
事業利益23,000
事業外損益△ 2,000
経常利益21,000
臨時損益1,000
税引前純利益22,000

どうだろうか?

★部分に着目して欲しい。経営コストに大きな差がある。A社は10,000千円なのに対して、B社は3,000千円だ。これを経営者の報酬と考えれば、B社の経営者は年間3,000千円の報酬でガマンして利益を確保している、ということが推察できる。

どちらの収益性が良いか?一目瞭然である。明らかにA社の方が儲けている。

このように「財務会計」では全く同じ両社を「管理会計」に置き換えると収益性が可視化できるのだ。

経営損益計算書の見方

では、この「経営損益計算書」の見方を紹介しよう。

限界利益を100としてバランスをチェックする

「理想のバランス」の基準を「限界利益」とする。

「売上高利益率」のように、一般によく出回っている「売上高を基準とする方法」では、業種によってバラツキがあって煩雑になるので当社では「売上高」を使わない。すべての業種に共通して使える「限界利益」を基準とする方が正確であり、実務的でもあるからだ。

創造付加価値は30%以上か?

経営損益計算書

売上高
変動原価
限界利益     100
事業コスト     70
創造付加価値★   30
経営コスト     10
事業利益      20

管理会計では、固定費を「事業コスト」と「経営コスト」に大きく二つに分けるが「創造付加価値」は、限界利益から「事業コスト」を控除した利益の名称である。(私が命名したので、世間一般では使われていない指標である)

この「創造付加価値」を設ける理由は、計算構造からもわかるように「経営者の恣意的なコスト」を区分して計算することで「本業の収益性」を可視化するためである。

節税目的で高額な役員報酬を取っている場合や、同様の目的で損金性の生命保険料を支払っていたり、さらには(税務署には内緒であるが)経営者の私的な交際費など、これらの「経営コスト」は本業の収益性を判断するにあたって「邪魔な存在」である。

したがって、これらの「経営コスト」は別枠にして「創造付加価値」を計算する。こうすることによって「経営者に分配する前の、本業による稼ぎ高」を正確に把握できる。この「創造付加価値」は「限界利益の30%以上」が黒字企業のひとつの目安だ。

言い換えれば「黒字」のためには「事業コスト」のMAX上限は「限界利益の70%」ということになる。

上記のA社はクリアしているが、B社は26%であり30%に達していない。あと4ポイント改善することが解決すべき課題、ということになる。

具体的には・・・

  • 売上高を増やす
  • 限界利益率をアップする
  • 事業コストを削減する

の組み合わせによる対策によって改善する。

事業利益は20%以上か?

経営損益計算書

売上高
変動原価
限界利益     100
事業コスト     70
創造付加価値    30
経営コスト     10
事業利益★     20

次に「創造付加価値」から「経営コスト」を控除して「事業利益」を計算するが、これは「限界利益の20%以上」を目安としている。

したがって「創造付加価値」が、目安通りの30%を稼ぎ出しているとすれば、差し引き「 経営コスト 」は10%以内、ということとなる。

役員報酬や、交際費などの「 経営コスト 」を10%以内に抑え「事業利益」が20%以上をクリアすると「いい感じ!」ということになる。

上記のA社B社は、両社とも20%をクリアしているので「合格」であるが、B社は「経営者のガマン」によって「絞りだした感」が否めない。

税引純利益は10%以上残そう!

経営損益計算書

売上高
変動原価
限界利益     100
事業コスト     70
創造付加価値    30
経営コスト     10
事業利益      20
法人税等      10
税引後純利益    10

限界利益の20%の「事業利益」を計上すると、法人税等の負担が必要になる。

現在の実効税率は35%前後と、低くなっているが、そこは「覚えやすくするため」大雑把に「税金は半分」として、この「理想のバランス」を計算することにしている。

事業利益20のうち、半分税金とすれば、残り半分が残る。だから10%という理屈である。

1年間、売上がゼロでもつぶれない会社にしよう

限界利益100
事業コスト70
経営コスト10経営者の取り分
法人税等10社会の取り分
税引後利益10会社の取り分

上記をまとめると「限界利益」を100とした場合の、目指すべきバランスは、左記のようになる。

つまり「限界利益」の70%のコストで30%の創造付加価値を残す。

そして、これを「経営者」と「社会」と「会社」で3分割する、というバランスだ。

言ってみれば「経営者と、社会と、会社で山分け」である。

これ(これ以上)を毎期キープすることで「毎年、限界利益の10%が内部留保される」ことになり、これが10年続くと、10%×10年=100%、つまり、限界利益の1年分が内部留保されることになる。

極端な言い方をすれば、1年間、全く売り上げが上がらなくても「つぶれない会社」となることができるのだ。まずは、この「1年分の限界利益相当の内部留保」を目指してほしいと思う。

人的コストは、35%以内が目安

人件費についても付け加えておこう。

「事業コスト」は、限界利益の70%以内と紹介したが、その中で大きなウエイトを占めるのが「人的コスト」である。

これは限界利益の35%以内が、黒字企業の標準である。「人的コスト」は給与や賞与など、社員に直接支払うもの以外に、社会保険の会社負担額や、福利厚生費、通勤交通費など「ヒトに関わるコストのすべて」を含む。

黒字企業の場合、これが限界利益の多くても40%以内に収まっている。一般には「労働分配率」と呼んでいる指標とほぼ同義である。

理想のバランスを崩している例

以上が「収益性の理想のバランス」であるが、このバランスを崩している典型的なサンプルを二つ紹介しておこう。

人的コストのバランスを崩しているケース

経営損益計算書

売上高    12000
変動費     7000
 限界利益   5000
人的コスト   2500(50%)
その他コスト  2000
 創造付加価値  500(10%)
経営コスト    500(10%)
 事業利益      0(0%)

左記の例では、人的コストが50%と、標準値(35%)を大きく上回っており、創造付加価値が10%しか稼げていない。

したがって、経営コストを標準の10%で抑えていても事業利益はゼロ、という結果となっている。

この場合は、限界利益と人的コストのバランスを崩しているので、検討すべきは(1)限界利益を増益する(2)人的コストを圧縮するの両面であり、一方的に「人件費削減!」ではないことに留意しなければならない。

経営者が取り過ぎている?ケース

経営損益計算書

売上高    12000
変動費     7000
 限界利益   5000
人的コスト   2000(40%)
その他コスト  1500
 創造付加価値 1500(30%)
経営コスト   1500(30%)
 事業利益      0(0%)

左記は、上記と同様、事業利益がゼロであるが、これは「経営者」に問題があるのでは?と想定されるケースである。

創造付加価値は、標準通り30%をクリアしているのであるが、経営コストが、標準の3倍にもなる30%を取っている。

経営者が「個人的に預貯金して万が一に備えている」ということであれば、まだ理解できるが、もし、この「経営コスト」が個人的な贅沢や交遊に消えているのであれば経営者としての姿勢を見直さなければ、というケースである。

経営損益計算書の実務

この「経営損益計算書」の実務にも触れておこう。

一言で「経営損益計算書」といっても、業種や規模によるアレンジが必要なので、結果として「個別にエクセルシートを作成する」ことになる。「経営損益計算書」のフォーマットをエクセルで作成し、会計ソフトからエクスポートしたデータを読み込むことで「経営損益計算書」がアウトプットされる仕組みで運用している。

追々サンプルをダウンロードできるように準備しているので、楽しみに待っていて欲しい。

堀井
堀井

もし「待てない!」のであれば、お問い合わせページから「見積希望!」と連絡をいただければ喜んで対応します(笑)。

【まとめ】課題は「あるべき姿」と「現状」の比較で明らかになる

経営課題を抱えていない企業はないだろう。その程度に差はあるが、どんな会社でもなんらかの経営課題を抱えている。

ここで紹介した「経営損益計算書」は「理想のバランス」と「現在のバランス」を比較することで、収益体質の課題を明らかにするツールだ。言ってみれば「損益計算書の理想のプロポーション」になるために、どのようなトレーニングをするか?である。

お役に立ちますように!