「ちゃんと」がコミュニケーションエラーを引き起こす

ビジネスの現場でしばしば起きるコミュニケーションエラーは、生産性を阻害するだけではなく、時には感情的な対立までを引き起こす。その原因のほとんどが「曖昧な言葉遣い」だ。お互い、ちょっとした配慮や意識さえあれば、無駄なコミュニケーションエラーを無くすことができる。ここでは、そのためのヒントを紹介しよう。

曖昧な言葉を使ってないか?

ボクは「ちゃんと」という言葉が好きではない。

「”ちゃんと”、やっといてね!」
「はい、”ちゃんと”やっておきます!」

「”ちゃんと”できた?」
「はい、”ちゃんと”やりました!」

「え?ゼンゼンできてないやん!」

「”ちゃんと”やりましたよ!」
「これで、”ちゃんと”なの?」

「”ちゃんと”できてるじゃないですか!」
「”ちゃんと”ってのは*****ということだよ!」

「だったら、最初から”ちゃんと”説明してくださいよね!!」

ほとんどお笑いだ。

仕事をしてると、誰でもコミュニケーションエラーに遭遇する。コミュニケーションは「情報や意思の伝達」であるが、そのエラー。その多くは、このような「曖昧な言葉使い」に原因がある。

「ちゃんと」の想定が両者で食い違っているからエラーになるのだ。付き合いも長く、相手の「ちゃんと」のレベルが一致している間柄であれば、こんなに便利な言葉はないと思う。ところが、残念ながら現場はそんな「以心伝心」な相手ばかりではない。

みんな「ものさし」が違う

「程度の差」や「ボリューム」についても「曖昧な言葉遣い」でしばしばトラブルが起きる。

「儲かってる?」

さて、あなたはどのあたりから「儲かってる」と感じるだろうか?

街の中での井戸端会議・・・

「あの会社、毎年、スゴイ利益が出てるらしいよ!」
「え~すごいやん!」

のような会話。この両者の「スゴイ利益」って、一致しているだろうか?

「スゴイ利益ってどれくらい?」
「100万円!」
「え?たった・・・」

と、具体的に「金額」を表現すると、両社のギャップはなくなる。しかし、そのまま「スゴイ利益」だけで会話が終わると、噂がウワサを呼んで「スゴイ利益」が「スゴイ会社」にまで伝言ゲームは進むかもしれない。

街の中の会話なら「笑い話」で済ますことができるが、これが「仕事の現場」で起きると、重大なトラブルにまで発展するリスクすらある。

ボクにも若い時の苦い思い出話がある。まだ金銭感覚が若い時だ。

税理士になるべく修行していた頃、担当先の経営者に

「社長、今期はスゴイ税金になりそうなので、エライことです!」

と少々大げさに報告してしまった。

「それは大変だ!どうすればいい?」

と「危機感」はを共有できた。

が、しかし・・・ご想像のとおり・・・。

「堀井君、君が大げさに言うから、とんでもない納税かと思って心配したよ!2000万円くらい当たり前の納税だろ!」

と、後日、納税額をご報告した際にチクりと言われた。当時のボクにとって「2000万円!」は大金で(もちろん「個人としたら大金」には変わりない)、ボクは担当先の納税を自分の「庶民のものさし」で捉えたばかりに「スゴイ税金や!なんとかしないと!」と一人で焦っていた。

最初から「2000万円くらいになります」と報告していれば、この「独り芝居」はなかった。

「どう?」
「めっちゃ儲かってます!」
「今期はヤバいです!」

このコミュニケーションはNG。数字で表現できるものは数字で表現する習慣が必要だ。

役職が上位になるほど曖昧な言葉遣いが増える

他にも「なるはやでお願い!」とか「きちんとやってね!」とか、ヒドイときは「よろしく!」の一言だけだったり。。。さらに、タチが悪いのは、役職が上位になるほど、この「曖昧ことば」が多くなり、言われた側は「上役に事細かに聞く勇気」もなく(面倒なだけ?)「は、はい!」と安易に答えてしまう。そこからは「ばくち」。たまたま当たるか、大外れするか。

上司の言い訳は、たいてい「イチイチ細かいことを言わなくても、考えたら分かるだろう!」だ。気持ちは分かる。教育目的でワザとそうしている場合もあるだろう。

しかし、ただ単に「面倒だから」という理由で「曖昧な言葉遣い」をしているなら、リーダーとして反省すべきだ。組織・チームのパフォーマンスを良くする=生産性を上げる、というリーダーの役割を考えれば「エラーが起きない・起こさない言葉遣い」は立派なスキルだ。

日本一を目指す!

ある会社の「中期経営計画」のキャッチコピーだ。その会社の幹部にヒアリングしてみた。

「何が日本一なの?」
「いや、社長が口癖のように日本一を目指す!」と言ってますが・・・」

と、頼りない答えが返ってきました。

「顧客数?売上高?社員数?何が日本一なの?」
「わかりません・・・」
(なんじゃこりゃ・・・)。

直接、経営者に聞いてみた。

「社長、日本一を目指すって、どういう意味なん?」

案の定の回答でした。

「いや、具体的にど~こ~って意味は無いんですけどね・・・」

後日、すでに配布していた「中期経営計画」をすべて回収してシュレッダーして、全部やり直すことになった。

コミュニケーションエラー以前に「コミュニケーションしていなかった」という事例だ。

まとめ

「ちゃんと」がコミュニケーションエラーを引き起こす、というよくある話を紹介した。多くの経営者に心当たりがあるはず。

「たまたま意思疎通ができてエラーにならなかった」
「相手の気遣いでエラーが表面化しなかった」
「上下関係、縦の社会で、下の者が泣く泣く悪者になってくれただけ」

などによって自分のコミュニケーションスキルの弱さに気付いていない経営者、あるいは、相手に甘えている経営者が少なくない。

もし気になったら、是非「経営者のコミュニケーション力」の改善に取り組んでみよう!

お役に立ちますように!