中小企業にとって「正しい人事評価制度」とは、どのようなものだろうか?
あなたの会社の人事評価制度は、正しく機能しているだろうか?
・中小企業にとって「正しい人事評価制度」とは、経営目標の実現のため、その担い手である社員の成長支援ツールとして機能しているものをいう。
・「経営計画」によって「ゴール」「シナリオ」「キャスティング」を具体的に示し、「人事評価基準」によって、そのために「必要なスキル」を示す。
・「経営計画」と「人事評価制度」は一体なので、毎年同時リリースする。
目次
「私はなぜ成長しなければならないのですか?」
社員にこのように問われたら、あなたは何と答えるだろうか?
「私はなぜ成長しなければならないのですか?」
もし、言葉に詰まるようであれば、ぜひ「正しい人事評価制度」を活用してほしい。
「正しい人事評価制度」とは、経営目標の実現のため、その担い手である社員の成長支援ツールとして機能しているものである。
目標達成のために「20項目のテーマ(=人事評価基準)」のスキルを習得して欲しい。
「なぜ成長しなければならないのか?」の答えは「みんなで目標を達成して幸福になるため」である。
みんなで目標を達成してもっと幸福になろう!
したがって、そのためには経営目標が一人一人の幸福の実現に結びついていなければならない。まちがっても経営者しか幸福にならないような目標を設定してはならない。誰も「経営者の犠牲のための成長」なんかするわけない。
目標をみんなで達成してその成果を分かち合い、それぞれが「幸福」を得る。会社はそのための道具である。
(参考)そもそも会社経営ってなんだ?
「私はなぜ成長しなければならないのですか?」
この問いかけには「みんなで幸福になるためだよ」と答えたい。
この言葉を裏付けするのが「正しい経営計画」と「正しい人事評価制度」である。目に見えるこの2つのツールが無ければ「みんなの幸福」なんて「ただのキレイごと」となる。
GSCが明確な「正しい経営計画」
「正しい計画」とは、GSCが明確な計画である。
- G:ゴール:いつ、どこへ到達するのか?
- S:シナリオ:ゴールまでの道のりは?
- C:キャスティング:その役割は誰が担う?
この3要素の中でとくに重要なのは「ゴール設定」である。ポイントは、みんながワクワクできるようなゴールであることだ。経営者が「この指とまれ!」と発した時、みんなは集まってくれるだろうか?「ぜひ、お供させてください!」と。
たとえば、よくある「売上前期比150%を目指すぞ!」と発した時に社員たちは心からワクワクしているだろうか?「面白い!やろう!」と思ってくれれば、このゴール設定は正解だ。しかし「(しんどいだけじゃん・・・)」なんて思われていたら「経営計画」も「人事評価」も空しい「絵に描いた餅」になることが多い。
ゴールするために、どんなスキルが必要か?
経営目標=ゴールするためにどんなスキルが必要か?を書き出そう。それが「人事評価基準」のベースとなる。
ゴールは、会社によってさまざまである。どんどん規模拡大を目指すような「攻撃型ゴール」もあれば、競合他社との品質を競うような「守備型ゴール」もある。あるいは、新商品や新サービスのリリースを準備するような「開発型ゴール」があるかもしれない。また、これらの「複合型ゴール」も少なくないだろう。
これらのゴールに到達するため、社員たちにどのようなスキルが必要なのか?が優先される。「攻撃型ゴール」であれば「営業系のスキル」が優先されるだろうし「守備型」や「開発型」であれば「開発系のスキル」が優先される、という具合だ。
「目指すゴール」と「求めるスキル」が結びつくことが非常に重要である。
スキルが上がるから給与や賞与が増えるのではない
人事評価の結果、給与や賞与があがる増えることは当然である。しかし、社員たちが誤解しないように常日頃から伝えなければならない大切なことがある。
スキルが上がると給与や賞与が増える
これには大切なことが抜けている。
スキルが上がりゴールへの貢献度が増すから給与や賞与が増える
「屁理屈」や「言葉遊び」に聞こえるかもしれないが、分かりやすい例を紹介する。
私は、英会話を勉強して日常会話には困らなくなりました。
この場合、英語力によってゴールへの貢献が認められるなら待遇はよくなるだろう。しかし「英会話スキル」を磨いても「ゴールのために英語は必要ない」のであれば、待遇は変わらない。「個人的な技能」で待遇が変わるわけではない。当然であるが、あくまでも「ゴールへの貢献」が評価されなければならない。
「私が英会話を一生懸命勉強しているのに、なぜ評価されないのですか?」
「いま目指しているゴールに英語は必要ないからだよ。しかし、いずれ英語が必要になるときがくるかもしれない。その時は評価基準に入れるよ」
ゴールが変われば人事評価基準も変わる
以上、経営目標と人事評価制度の関連性をご理解いただけたと思う。一言でいうと「経営目標への貢献度を評価する」という関係だ。
したがって「人事評価基準」は、ゴールが変われば、改定が必要になることもある。次の新しいゴールのために、新たなスキルが必要になるなら追加しなければならないし、必要性が低くなったスキルがあるならそれは削除である。
経営計画と人事評価基準は同時リリースすること
私がコーチの依頼をいただく会社で「経営計画」と「人事評価基準」を同時リリースしているところは今までになかった。
ここまででご理解いただけると思うが「経営計画」と「人事評価基準」は一体のものである。この2つを同時リリースすることで、社員たちの理解度は全く違ったものになる。残念ながら、別々の2つを自分でリンクできる社員はほとんどいない。
制度運用のスケジュールは下記のようになる(3月決算の場合)。
月 | イベント | |
---|---|---|
3月 | 前期末 | 前期末人事評価面談 経営計画と人事評価制度のリリース |
4月 | 期首 | |
5月 | ||
6月 | 夏季賞与(または7月) | |
7月 | ||
8月 | ||
9月 | 中間期 | 上半期人事評価面談 |
10月 | ||
11月 | ||
12月 | 冬季賞与 | |
1月 | ||
2月 | ||
3月 | 期末 | 期末人事評価面談 新年度経営計画・人事評価制度のリリース |
4月 | 新年度期首 |
まとめ
「経営計画」とリンクする「正しい人事制度」について紹介した。
- 経営目標は、みんながワクワクするゴールにすること
- ゴールするために必要なスキルを優先して評価すること
- 経営計画と人事評価制度は毎年同時リリースすること
みんなでゴールして幸福になるために成長しよう!という大義がなければ、社員たちは「給与や賞与を増やすため」に働くことになる。極端な言い方をすれば「給与さえもらえれば、会社の目標はどうでもよい」という社員たちが増えていくことになる。
経営者としての選択だ。
- 手間のかかる「正しい人事評価制度」を運用するか?
- ゴールに無関心な社員たちと事業を継続するか?
ぜひ、ゆっくりじっくり考えてみてほしい。
お役に立ちますように!