「経営者の理念力」魅力的な使命と幸福を伝えるチカラ

この記事のポイント

周りの大切な人たちは、あなたの事業を心から応援してくれているだろうか?

もし、不安があるならば「理念力」を見直す良い機会かもしれない。

「想い通り経営」に必要な「経営者の心技体」。ここでは「技」の中でも経営スキルの大切な一つ「経営者の理念力」について、その大切さと、改善のヒントを紹介しよう。

「理念力」が足りない経営者におきる3つの不都合

「心技体」の「技」は、「基礎スキル」と「経営スキル」の2つに分けているが「経営スキル」は、経営者必修の大切な実務スキルだ。

心技体

その一つである「理念力」は「事業の社会的使命を明らかにし、その活動と幸福の関係を言語化するチカラ」と定義している。

この「理念力」が弱いと、次のような不都合が起きるものだ。

チームがまとまらない

当然であろう。理念が弱いということは、チーム=会社の方向性が不明瞭ということだ。当社はどっちへ向かっているのか?頑張った先にはいったいどんな「いいこと(=幸福)」が待っているのか?そのために、どうやって力を合わせればいいのか?これらが分からない、つまり経営理念がない、あるいは、あったとしても「顧客第一」「社会貢献」など、極めて概念的にしか掲げていない場合、チームはまとまりようがないのだ。

もし「いや、当社はまとまっているよ」と反論してくれる経営者もいるが、私は「それは人間関係として仲が良いだけではないか?」と意地悪な突っ込みをすることになる。

人材が成長しない

経営理念を具体的に実現し、また、それを持続するためには社員たちの活躍が欠かせない。そのためにも社員たちには、もっと成長してほしい。しかし、掲げる目標・目的ともいうべき経営理念が不明瞭であるということは、トレーニングの大義名分がないに等しく、成長する必要性を伝えることができない。

優秀な人材が採用できない

一般的に優秀な人材は、何某かの目標を持っているものだ。成長意欲も旺盛である。そのような人材ほど「理念なき会社」や「理念なき経営者」に魅力を感じない。当然、そのような優秀な人材を採用することができないのだ。

魅力的な目標・目的(=経営理念)がない会社には、人生の目標や目的が無い者が集う。波長が合うから引き合うのだ。つまり「類とも現象」が起きる。

成長意欲旺盛な優秀な人材を引き寄せるためには、彼らを惹きつける魅力的な理念が必要である。

魅力的な経営者に学ぶ「理念力」、4つの大切な視点

この「理念力」が優れている経営者には大切な共通点がある。そのキーワードは、「社会観」「使命観」「幸福観」の3つに加えて「伝達力」の4つだ。ちなみに「そのような見方」という意味で「感」ではなく「観」としている。もし、この「理念力」に不安を感じるのであれば、是非、この4つの視点について自問自答してみよう。

多くの人々に響く社会観

まず、最初は「社会観」だ。

魅力的な経営理念を掲げる経営者は「役に立ちたい」という想いが強い。社会の一員として、期待に応えたい、課題解決に貢献したい、というWANTが強いのだ。

興味深い実験がある。

私は(ネタバレしてしまうが)経営者に「なぜ、この事業を行っているのですか?」と質問をすることがある。回答は大きく二分される。

「取引先の事業に貢献したい」という部品メーカーの経営者、「一家の団欒をもっと楽しくしたい」というパティシエ経営者、「一人でも多くの命を守りたい」という医療機器メーカーの経営者などがいる一方で「この商売はもっと儲かると思った」「一儲けしようと思って」という答えを返してくる経営者がいる。

「役に立って儲ける」は当然であり何も悪くない。しかし「どちらが先に口から出てくるか?」ということと業績が連動しているのだ。

前者「役に立ちたい」は、後者「儲けたい」に比べて「想い通り経営」を実現している確率が高い。

このような「社会観」を持った経営者の理念は多くの善良な人々によく響く。

心から溢れ出る使命観

2つ目のキーワードは「使命観」である。理念力が強い経営者は「この事業は、自分に与えられた使命である。」という想いを持っていることが多い。「天職」という表現を使う経営者もいる。

この「使命感」が強い経営者の言葉には説得力がある。本気で思っている、心から溢れ出る強さだ。

お飾りのような「社会貢献」「顧客第一」という「理念らしきもの」を掲げている経営者(もちろん本気で掲げている経営者は除くが)とは次元が違う。

3Gの幸福観

そして3つ目のキーワードは「幸福観」。簡単に言えば「みんなで幸福になろう」という想いだ。

会社経営の本質的な目的

社会に貢献したい、使命を全うしたい、と思っても自己犠牲が伴うなら見ていて痛々しい。このブログでも再三伝えている「3G」が幸福にならないことには、そもそも事業構造を見直さなければならない。

24時間営業のコンビニオーナーと仕事をしたことがある。立地もよく、そこそこ利益も出ていて、数字上は優良法人だった。しかし、人手不足ということもあって、そのオーナーはほとんど休日を取ることはなかった。見かねた家族も店頭に立って、表面的には幸せそうな家族経営だった。しかし、その負担がじわじわと心身を蝕んでいた。この家族の顔に「本当の幸福感」は伺えず、出口のないトンネルを歩いていた。

私は、このような状態を「本末転倒」と思っている。取引先や社員のために一生懸命頑張るのは経営者の使命であり、責任であるが、自らが幸福になれないのであれば、事業構造を根本的に改善しなければならないと思う。場合によっては「廃業」ですら選択肢なのだ、とまで思う。

「想い通り経営」の実現のためには「取引先グループ」「社員グループ」と「自分グループ」の3Gが幸福になる経営理念を掲げる必要があるのだ。

言語化し伝達するチカラ

どんなに立派で魅力的な経営理念を持っていても、周りに伝わらなければ無いに等しい。クドイ説明は不要だろう。理念を社員はもちろん、社内外の人々に伝え、浸透させる力が必要である。「絵に描いた餅」は食えないのだ。

(参考記事:「経営者の伝達力」大切なことを確実に伝えるチカラ

経営者として「理念力」が優れていることの幸福

理念力」とは「事業の社会的使命を明らかにし、その活動と幸福の関係を言語化するチカラ」である。改めて、経営者として「理念力」が優れていることの幸福を考えてみよう。つまり「経営者の理念力が優れている」とはどういう状態なのか?だ。

社会の役に立つという使命感を持って事業を行い、
その事業活動を通じて、取引先・社員・自分、
そして、それぞれの大切な人々の幸福に貢献するという理念を

分かり易い言葉で掲げ、
その理念の理解者、賛同者、協力者に囲まれている状態

本質は、このような自分の状態を「幸福」と感じる「心」を持っているか?である。このように「使命と幸福の魅力を伝える」ということが「建前論」と感じてしまうならば残念ながら「想い通り経営」は実現できない。

「経営者の理念力」は、「想い通り経営」に不可欠な「技」としてとても大切なチカラの一つだ。

あなたは何点?

1点:理解レベル
このチカラについて「理解」はできるが「納得・賛同」はできない。

2点:納得・賛同レベル
このチカラが必要なことは「納得・賛同」できる。しかし、身につけるには自信がなく、それによる不都合は受け入れるしかない。

3点:行動レベル
このチカラ不足によると思われる経営上の不都合が起きているので、このチカラを身につけようと目下「トレーニング中」である。

4点:習慣レベル
このチカラ不足が原因の経営上の不都合は起きていないので、この考え方、行動は習慣化しており合格レベルだと思う。

5点:指導者レベル
このチカラは当社の管理者や幹部クラスにも必要なので、自らが模範となって指導している。

「理念力」をトレーニングする方法

さて、ここまで読んで「心が痛い」と感じた人、つまり「自分には理念力が不足しているな」という自覚症状があれば早速トレーニングを始めよう。

  • 当社の事業は、社会の何に役立っているのか?
  • 顧客や取引先は、当社と取引することで、何に満足し、感謝してくれているのか?
  • 社員とその家族など、大切な人々は、当社に関わってなぜ幸福なのか?
  • 自分と家族など、大切な人々は、自分の会社経営によってなぜ幸福なのか?

を具体的に書き出してみてほしい。「なぜ幸福なのか?」と聞かれても今は充分な幸福状態になくてもよい。未来の幸福な状態を想像して書き出そう。

例えば、現在は充分な給料やボーナスを支払っていない、としても「当社の社員は、経済的に十分満たされ、安心して生活している」と書き切るのだ。なぜなら、経営課題がより鮮明になるからであり、それが解決へのスピードにつながるからだ。

苦手な人にとって、最初は言葉にすることが難しいかもしれない。しかし、この「言語化」のトレーニングを続ければ、気付いたときには「経営理念」が自然にできているはずだ。

ポイントは「誰にでも正しく伝わる言葉」で表現することだ。伝達力のトレーニングについては別稿「経営者の伝達力」大切なことを確実に伝えるチカラを参考にしてほしい。

【参考】習慣化のステップ
  • 理解レベル:理解できる。
  • 納得レベル:納得でき、賛同もできる。
  • 行動レベル:高めなければならない=MUST)と思い行動を続ける
  • 習慣レベル:MUSTからWANT(=高めたい)に変化する

まとめ

以上、経営者の理念力「事業の社会的使命を明らかにし、その活動と幸福の関係を言語化するチカラ」を紹介した。大切な視点は「社会観」「使命観」「幸福観」、そして「伝達力」だ。「想い通り経営」を実現するための「経営者の心技体」の大切な1つである。経営者の「考え方」が変われば、「行動」が変わり、望ましい「結果」に変わる。是非、参考にしてみてほしい。

お役に立ちますように!

【このブログについて】「若手経営者のための経営支援ブログ」