人事評価基準は「好みのタイプ」を伝えるメッセージ

「人事評価」は「採点のツール」ではなく「人材育成のツール」である。せっかく「人事評価」をやっているのであれば大切な社員たちの成長に活用しなければもったいない。

この記事では「人材育成のツール」として「人事評価」を行う場合「どんな評価基準にすればよいか?」について紹介しよう。

「好みのタイプ」は、人それぞれ

「あなたの好みのタイプは?」

・・・と言っても「異性」のことではない(笑)。社長として「どんなタイプの人材を求めていますか?」ということである。

「想い通り経営」を実現するために「優秀な人材」は欠かせない。会社が人の集団である限り、想い通りに経営できるか?できないか?に「人材」が大きく影響することは言うまでもない。

ここで大切な視点がある。それは、「想い通り経営」に必要な「優秀な人材」とは「あなたにとっての優秀な人材」であるということ。

「社長、優秀な人材がいるので良ければ紹介しようか?」と誘われて実際に会ってみたら「なんか違う・・・」ということがある。その人材は、紹介してくれた人にとっては「優秀」だとしても、自分にとって「優秀」とは限らない。つまり「自分の好みのタイプ」ではないのである。

黙っていたら「好みのタイプ」と出会えない

「好みのタイプ」は、人それぞれである。当然ではあるが、黙っていたら周りの誰にも伝わらないので、いつまで経っても「好みのタイプ」と出会うことができない。あなたの「好みのタイプ=優秀な人材」を採用し、育成するためには「好みのタイプ」をわかりやすく明確に言葉にして発信する必要がある。

あなたの「好みのタイプ」を言葉にすれば、それが人事評価基準の原型となる

人によって「好みのタイプ」は様々な要件の違いがある。

  • 慎重な人か?それとも大胆な人か?
  • 派手な人か?それとも地味な人か?
  • 営業系?それとも研究者系?
  • ハキハキ?それとも寡黙?

など「性格由来」の要件から、

  • お酒好き?それともキライ?
  • 喫煙者?それとも非喫煙者?
  • ロック系?それともクラシック系?
  • アウトドア派?インドア派?

など、プライベートな趣味嗜好まで。

「好みのタイプ」は様々な要素の複雑な組み合わせで決まる。さすがに、これらの条件をこのままストレートに公言することはできないが、自分の「好みのタイプ」に出会うために「本音」を整理することから始めよう。「想い通り経営」を実現するために自分はどんなタイプの人材を求めているか?である。

この「好みのタイプ」、意外と自分でもわかってないことがある。「優秀な人材」を求めているなら「下ごしらえ」として「こんなタイプが好き」「こんなタイプはキライ」と、具体的に言葉にして紙に書き出してみるとよい。

この「下ごしらえ」をしておけば、

  • 求めているスキル:どんなスキルを求めているか?
  • 求めているレベル:それはどんなレベルを求めているか?

の言語化が容易になる。そして、これをリストにしたものが「人事評価基準」の「原型」となる。

つまり「人事評価基準」は

 「私は、
  ・こんなレベルの
  ・こんなスキルを持った

  ・こんなタイプの
  人材を求めているんだ」

 という経営者のメッセージなのだ。

人事評価は「経営者の好みとして何点か?」を共有する仕組み

「人事評価基準」は、経営者が自分にとっての「優秀な人材=求めている人材」を具体的に言葉にしたものである。

したがって「人事評価」は「私の好みのタイプとして何点か?」=「私が求めている人材として何点か?」と、社員を数値化する仕組みに他ならない。

「私が求めている人材として、あなたは80点だ」と「見える化」し、お互いに共有する仕組みなのだ。

人事評価で「好み」を伝えて「好み」に近づいてもらう

「私の好みは、こんなタイプなんだ!」
「だから、少しでも私好みの人になってほしい!」

「人事評価基準」で「好み」を発信し、「人事評価」で「80点」と評価し、少しでも満点に近づくようにアドバイスしたり、フォローしたりする仕組みが「人事評価制度」である。

大切なのは「好みのタイプを伝えること」である。自分の「好み」をはっきり発信しなければ相手、つまり社員達は、どうすればいいかわからない。

この「発信」がないと、社員達は、それぞれ・・・

  • たぶん、こんなのがタイプだろうな
  • たぶん、このレベルでいいだろう
  • たぶん、これさえしなければいいだろう

など憶測するしかない。

もし「好みのタイプ」を発信しないまま「君は私の好みのタイプじゃない」と言えば多くの場合は「勝手にすれば!」とモチベーションは低下し、最悪の場合、あなたの元を去っていくだろう。

「人事評価基準」で「好みのタイプ」を伝えることで、相手は「あ、そういうのが好みなのね!・・・じゃあ、あなた好みになってあげる」と、ニュアンスは不適切?(笑)であるが、好みを伝えて、少しでも好みのタイプに近づいてもらうために運用する仕組みが、人事評価制度の本質なのだ。

「好みのタイプ」に育てるための人事評価制度

当然であるが、人事評価制度そのものは「目的」ではない。「目的」は好みのタイプの人材に成長してもらうことである。人事評価制度は、好みの人材に成長してもらうための「手段」に過ぎない。つまり「足りない部分」を補うためのサポートをしなければ「宝(=人事評価制度)の持ち腐れ」となってしまう。

満点:100点-評価:80点=20点不足。この20点をどうすればカバーすることができるか?をアドアイスしたり、フォローすることで人は育つ。予習復習を「自習」して自ら成長する人材は限られている。残念ながら、人は勝手に育つものではない。

「もっと、こうしたら私の好みに近づくことができるよ」と、「好みのタイプ」になってもらうためのアドバイスやフォローが必要だ。

人材育成のPDCA

人材を育成するためのPDCA(Plan-Do-Check-Action)を回そう。人事評価制度をこのサイクルに当てはめると

  • P:評価基準で「好み」を伝える
  • D:半年間の仕事ぶりを観察する
  • C:個人面談による評価・採点
  • A:「好み」に近づくためのアドバイス、フォロー、教育

となる。これらはサイクルで初めて効果が得られる。PDCAが連携することで人材育成が進む。「P:評価基準」をリリースするだけで人材が成長するなら、誰も苦労しないし、「C:評価・採点」するだけでいいなら、学生にはテストだけやっていればよい、ということになる。

学校に例えれば、学年ごとのカリキュラムがあり、それに沿った授業があり、その成果を確認するためのテストがある。そして、不合格者には補習でフォローする。

人を育てる、という意味では、学校も会社も同じなのだ。学生時代、予習復習自習ができなかった人材が、会社に入った途端に「自力で経営者の好みにまで成長する」ということはレアケースである。授業や補習で「おしりをたたき」「なだめすかし」根気よく寄り添ってやることが必要なのである。

そのためのPDCAサイクルを回そう。

まとめ

さて、人事評価基準は「好みのタイプ」を伝えるメッセージ、という切り口で人事評価を紹介した。

  • 面倒だ・・・
  • そこまで手をかけられない・・・
  • 自分にはできない

などと思った人が多いだろう。私がコーチングやトレーニングの現場で、ほとんどの経営者が最初に漏らす感想だからよくわかる。

しかし「好みのタイプじゃない社員と仕事を続ける」ことと天秤にかけ、少し考え方が変わる人がいる。さすがに「全員が満点社員」は理想論だろう。しかし「全員が合格社員」は経営者の取り組み次第では可能である。

ここで「考え方」と「行動」を変えれば「結果」は変わる。

あらためて「人材育成のツール」として「人事評価制度」を見直してほしい。

お役にたちますように!