「経営者の育成力」人材の成長を支援するチカラ

この記事のポイント

人材は、あなたの想い通りに順調に成長しているだろうか?

もし困っているなら「育成力」を見直す良い機会かもしれない。

「想い通り経営」に必要な「経営者の心技体」。ここでは「技」の中でも経営スキルの大切な一つ「経営者の育成力」について、その大切さと、改善のヒントを紹介しよう。

「育成力」が足りない経営者に起きる3つの不都合なこと

「心技体」の「技」は、「基礎スキル」と「経営スキル」の2つに分けているが「経営スキル」は、経営者必修の大切な実務スキルだ。

心技体


その一つである「育成力」は「人材がイキイキと活躍できるように成長を支援するチカラ」と定義している。

この「育成力」が不足していると、言うまでもなく「人が成長しない」が、そもそも、人材が成長しなければどんな不都合が起きるのか?当然のことではあるが、改めておさらいしておこう。

組織が機能しないことで手を煩わされる

組織の各ポジションに配置されている人材のスキルが不十分であると、そのポジションで問題が起きるだけではなく、関連する部署にも悪影響が及び、結果として組織全体が十分なパフォーマンスを発揮できない。

経営者は、そのフォローに手を煩わされることが少なくなく「誰々のおかげで手を取られて困ってるんだ・・・」という愚痴がついつい口から出てくる。

成長を前提とする目標設定ができない

経営者なら、少しでも会社を成長させたいと願っている。しかし、そのためには人材の成長が不可欠であり、それが前提条件となっていることが殆どだ。

品質改善、新商品の開発、販売の拡大、管理力の強化・・・やりたいこと、やらなければならない課題は山積みであり、これらを解決するために社員達には頑張ってほしい、と心から願っているのだ。

しかし、である。

人材が成長しないので、これらの課題は、またもや先送りされてしまうという現実に打ちひしがれる。。。

社員同士の不仲や衝突に手を焼いている

「優秀な人材」とは、その実務スキルだけではなく、組織内における他者と協調・連係し、相互支援が自発的にできる人材だ。

ところが「会社の人間関係」にストレスを抱えている人材も少なくない。私に言わせれば「人として幼い人材」だ。人として成熟しているなら、そのような「負の人間関係」は「大人の対応」で解決してしまう。

ところが、そのような「できた人間」が少ないために、そのしわ寄せがすべて経営者に押し寄せてくる。放置すれば、益々悪化するので看過もできない。できることなら、そんな「後ろ向きのエネルギー」は極力使いたくないはずだ。

これも実は、経営者の「育成力」に課題あるのであって「他責」ではないことを覚悟しよう。

人が育つ会社の経営者に学ぶべき「育成力」、3つの大切な視点

この「育成力」が優れている経営者には大切な共通点がある。そのキーワードは、「理念」「ニーズ」「成長支援」の3つだ。もし、この「育成力」に不安を感じるのであれば、是非、この3つの視点について自問自答してみよう。

魅力的な理念を掲げている

まず、最初は「理念」だ。「育成力」が優れている経営者のほとんどは「経営理念」が明確である。「社会的使命=事業目的」を正しく、分かりやすく内外に伝えている。

人材育成になぜ理念が大切なのか?それは「方向性が同じ人材を集める必要があるから」である。経営理念に賛同してくれる人材であるから、その理念実現のための成長に納得感がある。「理念実現のために一緒にガンバロウな!」というベースがなければ、あなたが求めている優秀な人材には成長しない。

そして、その理念が魅力的であるほど「方向性を同じくする人材」の比率が高まる。どういうことか?というと、人手不足を補うために、理念とは関係なく頭数を揃えないといけないこともあるが、5人しか集まらない理念より50人が集まる理念の方がよい、という意味だ。

少々自虐的であるが、私の失敗談を紹介しよう。

私は、1999年8月に大阪の北浜で税理士事務所を創業した。開業当初は目の前の会計や決算の仕事をこなさなければならないので、経験者を募集し採用した。目の前の仕事を片付けるための人材だ。もちろん、彼らは真面目にそれらの仕事を片付けてくれて私は大いに助かったし、そのおかげで順調に事務所は立ち上がった。

ひと段落したころ「付加価値」として、クライアントの経営支援を行うために「管理会計」の導入を進めた。そのために社員たちには「管理会計」のスキルを身に着けてほしかった。が。。。である。彼らは税金申告には興味があったが、経営支援には興味を示さなかった。当然であるが、興味のないことのスキルは身につかない。結果、私は孤軍奮闘、という毎日であった。

もし、あの時に「経営支援を特徴とする税理士事務所のメンバーを募集します」という具合に募集していたら結果は変わっていたと思う。実際は、経営支援なんてこれっぽっちも出さずに「税理士事務所経験者求む」という求人広告だったのだ。

これ以上、クドイ話はいらないだろう。必要な人材に成長してもらうためには「目指している方向」への賛同、興味が前提となる、ということだ。育成の方法の前に、方向を同じくする人材を集めなければならないのだ。

社員のニーズを正しく理解している

2つ目のキーワードは「ニーズ」だ。「育成力」が優秀な経営者は、自社の社員の「成長へのニーズ」を正しく把握していることが多い。このニーズは、時とともに変化することもあるので、定期的にヒアリングを繰り返してる。

なぜ「成長へのニーズ」を知る必要があるのか?簡単に言えば「成長意欲」である。成長意欲が強い人材には、多少困難な仕事でもチャレンジの機会を与えると喜んでくれる。しかし、そうでない人材の場合は、その仕事が「やらされ仕事」でしかなく、ストレスを抱えるだけ、ということがある。双方不幸である。

大切な視点は「成長しそうな人材」ではなく「成長したい人材」を優先的にサポートする。「どのように成長したいか?」というニーズを正しく把握し、個々に応じてサポートの方向や方法も工夫していることが多い。

よくあるのは「リーダーとして成長したい」というタイプと「リーダーではなく職人として実務を極めたい」というタイプ。この両者のサポートは全く違う。前者は、リーダーシップの機会を与え、後者は、困難な実務へのチャレンジ機会を与える、という具合だ。

もう一つ、よくある相談「合格ラインにない人材をどうするか?」であるが、これも、上記同様だ。「合格ラインに達したい」と思っていれば、当然、そのサポートをすることになる。が、そもそも「合格ラインに達したい」というモチベーションも小さい人材。誤解を恐れず厳しく言うと「今のままでは戦力外」という人材。理想論は「やる気を引き出すためにどうするか?」であるが、この問題は「劇薬治療」になるので、このような公開の場所で紹介できないのでご了承いただきたい。

成長支援を仕組み化している

そして3つ目のキーワードは「成長支援」だ。心に刻んでおかなければならないフレーズがある。それは「社員は勝手に育たない」である。大企業や有名企業に集まる優秀な人材は「自習力」を持っている人材が多い。彼らは、放っておいても自力で学習し、積極的に経験力を高め、成長していく、そのような人材が集まっているなら、会社は特に育成に時間と手間をかける必要はないかもしれない。しかし、一般の中小企業の人材に、この「自習力」を持った人材は少ない。誰かが手助けする必要があるのだ。

「育成力」が優れた経営者は「成長支援」を仕組み化しているケースが多い。その中でも最も参考にしたいのが「学校方式」を実務運用している経営者だ。簡単に言うと「PDCA」だ。

  • P:PLAN:育成計画:どのように育成するか?=カリキュラム
  • D:DO:研修・ビデオ学習・宿題・OJTによる育成
  • C:CHECK:人事評価制度の実務運用
  • A:ACTION:個別フォロー

このように、つまり「学校」と同じように、育成のためのカリキュラムを具体化し、それに基づいて「授業」がある、それは、座学もあるし、OJTもある。教えるプロセスだ。そして、その習熟度をテストするのが「人事評価」。次いで、人事評価によって明らかになった「不足しているスキル」を個別補習等によってフォローする。このようなPDCAのサイクルで成長支援をするのだ。

この話をして「その時間がない」「それをする教育係がいない」など「できない理由」を並べる経営者と多く出会ってきた。その時に、私が返していたフレーズは「ずっと物足りない社員とやり続けるのですか?」である。

(参考記事)
【人材育成の仕組み】成長する中小企業におススメの学校方式

経営者として「育成力」が優れていることの幸福

改めて、経営者として「育成力=人材がイキイキと活躍できるように成長を支援するチカラ」が優れていることの幸福を考えてみよう。つまり「経営者の育成力が優れている」とは、どういう状態なのか?だ。

経営理念に賛同し、
その実現と維持継続のために活躍してくれる人材が
成長支援の仕組みで

益々成長し続けてくれている状態

本質は、このような自分の状態を「幸福」と感じる「心」を持っているか?である。このように「成長を支援する仕組み」が「建前論」と感じてしまうならば残念ながら「想い通り経営」は実現できない。

「経営者の育成力」は、「想い通り経営」に不可欠な「技」としてとても大切なチカラの一つだ。

「育成力」をトレーニングする方法

さて、ここまで読んで「心が痛い」と感じた人、つまり「自分には育成力が不足しているな」という自覚症状があれば早速トレーニングを始めよう。

上記の3つの視点について、一つ一つ具体策を講じることである。

理念力を高める

社員たちが「やりましょう!」「頑張りましょう!」と賛同してくれる経営理念を明確にすることである。これは別稿を参照して欲しい。

(参考)「経営者の理念力」魅力的な使命と幸福を伝えるチカラ

ニーズの聞き取り

改めて「全員」の成長ニーズをリサーチしよう。あなたの会社の社員は「どのように成長したいと思っているか?」である。答えを持っていない社員もいるかもしれない。「特に、考えたことはありません」という反応だ。もし、そんな時は「年収は、どれくらい欲しい?」と生々しい質問が有効な時がある。「今の年収で充分です」という社員に「給料をアップするからもっと成長して!」とアプローチしても「暖簾に腕押し」だ。しかし「あと100万円欲しい」と、具体的な金額を教えてくれれば「じゃあ、***ができるようにガンバロウ」と声をかけることができる。これで火が付く人も少なくない。

これは一例であるが、このように個々にインタビューをして、ニーズの聞き取りをしよう。前述したように、彼らのニーズは時の経過とともに変化するので、一般的には半年ごとの人事評価の個人面談の機会にアップデートを重ねることが多い。

優秀な人材とは?を言語化する

前述した「学校方式」のPのステップ「カリキュラム」である。この「カリキュラム」作りが「育成力」のトレーニングとしてとても効果的である。「当社にとっての優秀な人材=当社の人材としてあるべき姿」を言語化することに他ならないからだ。慣れていない人は「優秀の言語化」は意外と難しいと感じるだろう。あなたは、どのような人材を優秀と認めているのか?を再認識する作業だ。

この作業によって「あるべき姿」と「現状」が明確になり「人事育成の課題」を知ることになる。是非、実行して欲しい。

(参考)「経営者の課題解決力」課題発見と解決への執念のチカラ

以上を継続すると、必ず「育成力」は高まる。「考え方」と「行動」を変えて「結果」を変えよう!

まとめ

以上、経営者の育成力「人材がイキイキと活躍できるように成長を支援するチカラ」を紹介した。

大切な視点は、「理念」「ニーズ」「成長支援」だ。「想い通り経営」を実現するための「経営者の心技体」のなかの大切な1つである。経営者の「考え方」が変われば、「行動」が変わり、望ましい「結果」に変わる。

なお、人材育成の実務は、下記のカテゴリーで様々紹介しているので、併せて参考にしてほしい。

【人が育つ】成長する中小企業には人材育成の仕組みがある

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