成長支援を目的とする「人事評価制度」の大切なプロセスである「個人面談」について整理しておきます。
おさらい「人事評価の目的は成長支援」
まずは大切な「人事評価の目的」をおさらいしておきましょう。
「人事評価」は社員の成長支援のためにあります。
人事評価基準に照らし合わせて「成長課題」を明確にし、その課題解決によって人材の成長を促す取り組みです。給与を確定することが主目的ではない、ということに注意しましょう。
あくまでも主目的は「成長支援」、給与計算はその次です。
「成長支援」のサイクルもPDCA
人事評価制度の運用による成長支援も一般的なPDCAサイクルに乗っかっています。
- PLAN:人事評価基準による「当社の社員としてあるべき姿」を明確化
- DO:実践(社員)と観察(評価者)
- CHECK:人事評価による成長課題の明確化と共有
- ACTION:課題解決の取り組み
このPDCAを回すことによって社員の成長を支援するわけです。
今回のテーマである「個人面談」は、ACTION(課題解決)のサポートのためのプロセスです。
双方が「個人面談」の目的を正しく理解納得していること
「個人面談」を実施するにあたって、とても重要なのは、評価者と社員の双方が「個人面談」の目的を正しく理解していることです。
これ、繰り返しますが「とても重要」です。
万が一、評価者が「評価点を伝える(フィードバック)時間」とか「ダメ出しをする時間」とか「反省を促す時間」とか、さらに、あってはならない「説教の時間」なんて勘違いしていると絶対失敗します。
また、同様に社員に個人面談の目的を正しく伝えていないために、上記の裏返しのように「評価を告知される時間」とか「ダメ出しされる時間」「叱られる時間」なんて勘違いして必要のない緊張や萎縮をするようであれば、この時点ですでに「人事評価制度」は失敗していると言わざるを得ません。
人事評価制度は成長支援のための制度であり「個人面談」は「前向きで、建設的な時間」であることを双方が正しく理解し、納得していることがとても重要なのです。
「個人面談」に対する双方の気持ち
「個人面談」に望む双方の気持ちを念押ししておきますね。
評価者側の気持ちは「期待」
「個人面談」に備えて評価者側が持っておくべき気持ちは「社員一人ひとりに成長して欲しい」という社員に対する「期待」です。
「成長して欲しい」という期待の気持ちがなければ、そもそも「成長支援型人事評価制度」が成り立ちません。前提条件となる気持ちです。
万が一「個人面談ってメンドウなんだよね・・・」なんて思うならば「人事評価制度」は止めた方がいいです。「偽善的人事評価制度」では、だれも幸せになりません。その場合は昭和の体育会系みたいに(?)「トップダウン・一方通行」で評価する方がうまく機能します。
社員側の気持ちも「期待」
一方「個人面談」に対する社員側のあるべき気持ちも「期待」です。
定期的に行われる「人事評価に基づく個人面談」を彼らが楽しみにしている状態=期待が目指す状態です。
かれらが何に期待するか?それは「自分の成長」です。
「個人面談」によって、自分の成長課題が明確になり「どうすればもっと成長できるか?」のヒントが得られ、さらに、そのためのフォローもしてもらえる、その結果「成長できる」という期待です。
もし「個人面談」に臨む彼らに「期待」がないとき・・・それは「期待できない個人面談」をしている評価者側として反省と改善を行う必要があります。
評価者側は、彼らが「期待し、楽しみにしてくれる個人面談」が実施できるよう取り組まなければなりません。
「個人面談」のステップ
さて「個人面談」の実務をステップ別に紹介しましょう。
STEP1:事前準備のための「自己評価」の回収
「個人面談」の前に全員から「自己評価」を提出してもらい回収しましょう。
「いつまでに提出してもらうか?」については、各社の事情によりますが「個人面談」の十分な準備ができる時間を確保する必要があります。
STEP2:事前準備:「自己評価」と「評価者評価」の照合
提出してもらった全員の「自己評価」について評価者は「自分の評価とのギャップがないか?」をチェックします。
例えば「コミュニケーションスキル」について、本人の「自己評価」では【4点】なのに、評価者側の評価は【2点】というようなケースです。
- たしかに自分の評価【2点】は厳しいなあ。言われてみれば本人の【4点】が正しいな。
- 彼は自己評価が甘いな・・・自分を過大評価しすぎてるけど、なんでだろう?
- 【2点】は厳しすぎるけど【4点】でもないな・・・【3点】が適正だろう
など・・・このギャップについて、よく考え「面談」の準備をします。
しかし「点数を付ける」のは「手段」であり「目的」は「成長支援」なので、「どうすれば本人評価の4点にすることができるか?」「4点レベルに成長するためにはどうすればいいのか?」など「個人面談」の場において「どのようにアドバイスするか?」も併せて具体化しておく必要があります。
具体的な課題解決方法も示さず「4点のために根性で頑張れ!」のような面談になれば「失敗」です。
このように「個人面談」の前に、一人ひとりの評価と、点数アップのための具体的なアドバイスを事前に整理しておきましょう。
STEP3:「個人面談」の当日=時間のこと
「個人面談」はあらかじめ時間を決めておきましょう。一般的には30分~1時間が必要です。
ひとつの目安は「社員満足度を得るために必要な時間」です。
上述したように、彼らは「個人面談に期待」しています。この期待を裏切るようなことがあってはなりません。時間の長短ではなく、仮に10分であっても彼らが満足してくれればいいのですが、ボクの経験上「満足感」はそれなりの時間が必要です。
反対に1時間を超えそうなとき。例えば、ギャップのあるテーマが多くて、一つひとつにアドバイスをしていたら時間が足りない、というようなときです。その時は「改めて時間を取ろう」と、別日を提案し「時間無制限の機会を作ってじっくりサポートするよ」という姿勢が必要です。まちがっても「時間切れ」という中途半端な状態で終わらないように気を付けましょう。
STEP4:「個人面談」の当日=話の進め方
さて「個人面談」の進め方ですが、おおむね次のようなシナリオです。
- 「自己評価」と「評価者評価」のギャップの確認
- 「成長課題」の共有(相互認識)
- 「課題解決方法」の共有(アドバイス)
- その他の悩み・不平・不満のヒアリング
相手が「人間」なので、すべてがテンプレート通りには進みません。むしろ進まないことの方が多く、臨機応変な対応が必要です。
どのようなシーンになっても「そもそも」の「成長支援目的」を忘れないようにしましょう。
目の前の社員が「どうすればよりよくなるか?」の一点集中です。
STEP5:「個人面談」のあと・・・
「個人面談」が終われば、そのあとのフォローが大切です。
このプロセスが「成長支援」の本番です。
「個人面談」によって共有した「成長課題」を「解決」しなければなりません。
この「解決」のために約束したフォローを実際に実行しなければなりません。
「あなたの課題解決のためにフォローするから頑張って!」と約束したのに、その後放置しようものなら信頼関係は簡単に崩れてしまいます。
日常のコミュニケーションの中で「解決の進捗状況」について「声をかける」ことが大切です。
このアフターフォローを忘れないようにしましょう。
補足:緊張させないこと

ひとつ補足します。
「個人面談」は、いわゆる「1 on 1」で実施しましょう。人は「1対1」の方が「腹を割って」話しやすくなるからです。
社内の人間関係など「ここだけの話」が出ることもあります。双方の「信頼」があって初めて貴重な情報を得られることもあります。
また、社員たちは「期待」していると同時に「緊張」もしています。評価者、時には社長と1対1で面談する、という場面は想像以上に緊張したり萎縮したりしてます。
この「緊張感」をほぐすことにも配慮しましょう。
時には「対面」ではなく、写真のように「並んで座って」の方がリラックスできる場合もあります。
その方法は、様々ですが、相手に応じて工夫することも考えましょう。
まとめ:評価者として成長する視点
さて・・・「個人面談」について整理しました。
いかがですか?
「手間がかかるなあ・・・」と思いますか?
実際「時間」や「手間」だけでなく、何より「気」を使うので、評価者の負担感は相当だと思います。
実は、ここに「もう一つの大切な視点」があります。
「評価者が負担に感じる理由」は「評価と育成のスキルが足りないから」です。
厳しいことを言いますが、社員と向き合って成長支援することの「反復」こそが「評価者としてのトレーニング」であり「評価者の成長」に繋がります。
社員の成長とともに評価者が成長することで会社は進化します。
この「評価者の成長」という視点も併せて忘れないように頑張ってください!
お役に立てますように!