立派な「経営理念」も、社内外に正しく伝わらなければ「絵に描いた餅」だ。「想い通り経営」を実現するためには社内外に「想い」を伝えなければならない。「経営理念」を社内外に浸透させるための大切なポイントを紹介しよう。
この記事のポイント!
経営者の悩み・・・想いが伝わらない
- 経営理念や、自分の想いが中々伝わらない
- 経営者の気持ちが分かってもらえない
- そもそも社員は経営者の気持ちなんて分かるはずがない・・・
という悩み(あきらめ?)を持つ経営者は少なくない。ついつい相手の理解力に問題があるのだ、と「相手のせい」にしたくなる気持ちも分かるが、今一度、自らの「伝え方」、つまり「経営者の伝達力」を見直そう。
「伝える質」と「伝える量」に分けて課題解決する
さて「想い通り経営」のために大切なことを伝えるチカラである「経営者の伝達力」。 当たり前であるが、多くの人は、言わないとわからない。もし「言わなくても、わかってくれているだろう」と思っているのであれば、今すぐその「幻想」「空しい期待」は捨てよう。 特に「経営理念」となればなおさらだ。
さて、この「経営者の伝達力」の課題を解決するにあたり、「伝える質」と「伝える量」み分けて検討してみる。
「伝える質」の課題解決
「経営理念」が正しく伝わらない原因が「伝える質」にあるのは、下記のようなケースである。
- そもそも「経営理念」に課題がある。例えば、概念的であったり、具体性に欠けている、あるいは社会正義に反している、など。
- そもそも「経営理念」が明文化されてない。社長は、常に熱く「想い」を語っているが、明文化されておらず、相手は「耳にタコできる」としか受け止めてない。
- 壁に貼ってるだけで、事実上フェードアウトしている。その結果、形式化している。
- 理念が人事評価と連動していない。したがって、理念にそって成果を出しても評価されない。結果、当事者意識が薄い。
- 経営者自身が順守していない。論外。「言っていることと行動がちぐはぐ」なので、社員たちは「建前」としか捉えていない。
さて、心当たりはあるだろうか?
「伝える量」の課題解決
「経営理念」が正しく伝わらない原因が「伝える量」にあるのは、下記のようなケースである。
- 正しく理解してもらうための、教育研修が行われていない。浸透させるための研修等を実施していない、など。
- 「経営理念」に接する機会が少ない。日常において「経営理念」を話題にすることがなく、正月や創業記念日など、何かのセレモニーの時にしか取り上げられない、というようなケース。
という事例をよく見かけるが、御社は大丈夫だろうか?
「経営理念」を伝える様々な工夫
「経営理念」は、決して「お飾り」ではなく、当然「建前論」でもない。「経営者の想い」を言語化した「経営理念」は、社内外の賛同者や協力者を得るためのプレゼンツールである。正しく伝えるために、効果的なプレゼンテーションを継続的に実施しよう。いくつかの好事例を紹介する。
ただし「経営理念」そのものに課題がある場合は、どんな伝え方をしても伝わらないのは当然である。もし「伝達力」以前に「理念力」に課題があるな?と感じるのであれば、先に下記の記事を読んで欲しい。
経営理念実践会議を実施している例
まさに好事例の一つであるが「経営理念」を浸透させ、実践するために定期的に会議を実施しているケースだ。
頻度は様々であるが、多くて月1回、少なくても年に2回は「経営理念」を実践した事例を社員全員が持ち寄って、共有する、という場を設けている。
ポイントは「経営理念の実践によって、お客様の役に立ち、大変喜んでいただいた」と「誰かの役に立った」という形で「成功事例」を発表することだ。
つまり「行動」だけではなく、その結果としての「成果」を共有すること。「経営理念」は、単なる行動指針とは違って「誰かの役に立つ、もっと役に立つ」という視点で運用することが重要だ。
したがって、クレームも良い事例になる。「経営理念」に反した行動の結果、クレームを頂いた、ということを共有することで、さらにリアリティーを持った経営理念として浸透していく。
社員が講師となって研修を開催する例
「経営理念」は「経営者の想い」そのものであるが、ピラミッド型組織の場合、上層部ほど、その正しい理解と賛同、そして行動が求められる。
定期的に、管理職やチームリーダーが「教える側」として「経営理念研修」の講師をすることで、その管理職やリーダーにおいては「当事者としての理解」が深まる。
朝礼や会議の開催前に「経営理念」の実践例をテーマにした5分スピーチの時間を設ける
いわゆる全員での「唱和」は、あまり効果がない。表面的な暗記では意味がないからだ。実質的な理解と実践を促すために、朝礼や会議で集う機会には、必ず誰かが「5分スピーチ」を行う。内容は「経営理念の実践による成功例・失敗例」だ。前述の「経営理念実践会議」をもっと「日常化」した好事例である。
人事評価の項目に「経営理念の実践」を加える
「経営理念の実績」を人事評価に加えることは、全員に浸透させるために最も効果的な方法だと思う。もちろん「実践できてないから給料を下げるぞ!」なんて意味ではなく「実践できたから加算して報いる」という意味での人事評価だ。
以上、一例であるが参考にしてみてほしい。
「習慣化」のステップ別に対処法が違う
「経営理念を意識する」というレベルを超えて、各自にとって経営理念がメンバーの価値観として「思考習慣」「行動習慣」まで落とし込みができている状態が「あるべき姿」だ。参考までに「習慣化のステップ」をご紹介しておこう。
- 理解レベル:理解できる。
↓ - 納得レベル:納得でき、賛同もできる。
↓ - 行動レベル:高めなければならない(=MUST)と思い行動を続ける
↓ - 習慣レベル:MUSTからWANT(=高めたい)に変化する
このステップに従って「経営理念の浸透」を当てはめてみると・・・
- 経営理念を理解してもらう取り組み
- 経営理念に納得・賛同してもらう取り組み
- 経営理念を実践してもらう取り組み
- 経営理念の実践が当たり前、と習慣化する取り組み
という具合だ。このステップに従って丁寧に関わることが、実は「近道」ということも少なくない。
伝わってないな、と感じた時は、必ず、上記の「習慣化のステップ」を参考にして欲しい。
「理解できてないのかな?」
「納得してないのかな?」
「行動していないだけかな?」
と段階に応じて「現状」を確認すること。
そうでないと「何度言ったら分かるのか!?さっさと行動せよ!」なんて声を荒げることになってしまう。
「理解していないから動いてない」
「納得してないから動いてない」
「納得しているのに動いてない」
これらは、それぞれ対処法が違うのはお分かりいただけると思う。
まとめ
「経営者の伝達力」を「経営理念」に着目して紹介した。
当然、この「経営者の伝達力」は「経営理念」だけではなく、経営者と社員のコミュニケーションという意味で、リーダーの必須スキルである。
「想いを伝える」ことが得意な人や苦手な人、様々であるが、いずれにしても「正しく伝わらないのは、相手の理解力が原因ではない」「自分の伝達力が弱いのだ」という自責の気持ちを忘れず「量」と「質」の2つの視点でアップデートして欲しい。
お役に立ちますように!

「経営計画のコーチング」も併せて参考まで!