【経営コーチの現場】経営理念のサポート、大切な2つの視点

私は、若手経営者のマネジメント・コーチとして多くの中小企業をサポートしてきたが、その主なテーマの一つが「経営理念作り」だ。

中小企業の経営理念を作成するときの大切な2つの視点についてマネジメント・コーチの現場での事例を交えて紹介しよう。あなたの会社の経営理念の作成や、見直しの参考になれば幸いだ。

事業目的=社会的使命を伝えるための経営理念

規模の大小はあれど「会社」というのは人の集団であり、経営者=社長は、その集団=組織のトップリーダーである。関わる人々とともに事業目的を実現するために仕事をする。経営理念は、この関わる人々に「事業目的」を伝えるためのツールである。したがって、規模の大小に関わらず「経営理念」は必ず必要である。

ただし「想い」があるなら、である。

特に目的がない会社や、なんらかの事情で特に「経営」をしなくても自動的に売上が上がり、利益が出るような会社など「特別な事情」がある会社はこの記事では対象外とする。

そのような特別な事情がない限り、どんな会社でも実現したい事業目的がある。会社が社会の一員である限り、この「事業目的」は経営者が自ら定めた「社会的使命」である。

また、その「社会的使命」を果たすことを通じて、関わる全ての人を「幸福」に導かなければならない。そのための犠牲者が出てはならないのだ。

したがって、私は「会社の社会的使命を明らかにし、その実現と幸福の関係を言語化したもの」を「経営理念」と定義している。

経営理念の作り方、大切な2つの視点

経営理念は、どのようにして作るか?大切な2つの視点がある。

視点1:事業目的=社会的使命は何か?

「そもそも論」である。

  • 何を目的とする会社なのか?
  • 社会の中でどんな貢献をするのか?
  • 誰の役に立つのか?
  • 存在価値は何か?

などの切り口を変えた質問を繰り返し、このディスカッションを通じて「事業目的=社会的使命感」を言語化することから始める。大切なのは次の2つの視点である。

  • 多くの人々に響く「社会観」
  • 心から溢れ出る「使命観」

この2つの視点が大切な理由は「事業目的実現のための協力者・賛同者を得るため」である。この中には、当然「社員」も含まれる。社会観や使命感が欠けたり不足すると優秀かつ善良な人が集まらない。言うまでもないが、孤立無援では会社は成り立たない。

「ビジネスで一儲けしたい!」と思う経営者は少なくない。私もそのように思うことはよくある。クライアントと一緒になって「フムフム!これは儲かりそうやね!」「必ず当たるよ!」なんて盛り上がることもある。

しかし「一儲け」は「結果」であって「目的」ではない。

誰かの役に立ち、かつ、誰にも迷惑をかけないビジネスの結果の「ご褒美」が「利益」だ。これは「経済的な利益」以外にも「多くの人々が集まる利益」や「社会からの信用や信頼という利益」などのお金には代えられない「幸福感」も含まれる。

まずは「誰の役に立つのか?」という「社会観」と、それを「私がやらなければ誰がやる?」という「使命感」を持って事業目的=社会的使命を言語化するサポートをする。

視点2:みんな幸せになるか?犠牲者は出ないか?

事業目的=社会的使命を実現すれば、関わる人々は幸福になれるか?犠牲者は出ないか?いわゆる3Gベストだ。

会社経営の本質的な目的
  • 顧客や取引先は、当社と取引することで、何に満足し、感謝してくれているのか?
  • 社員とその家族などの大切な人々は、当社に関わってなぜ幸福なのか?
  • 経営者自身とその家族などの大切な人々は、自分の会社経営によってなぜ幸福なのか?

経営者とディスカッションしていると「自分ファースト」に考えていることを感じることがある。そんなときは、この3つのグループに「想いを馳せる」というイメージトレーニングをサポートする。

上記の、事業目的=社会的使命の言語化によって「顧客への貢献」は具体化されているが、その実現過程で「取引先」「社員」あるいは「自分の家族など大切な人々」が犠牲になるようなことがあってはならない。

難しく考える必要はない。

たとえば、あえてネガティブにイメージすると・・・

  • 社員たちのハードワークの結果、それぞれの帰宅時間が遅くなり「社員の家族団らん」が犠牲にならないか?
  • 過剰な価格交渉で取引先に「無理強い」をすることにならないか?
  • 会社経営に没頭するあまり「自分の家族や大切な人」に我慢させることにならないか?
  • 資金を融通してくれた人に礼を尽くせるか?

などをディスカッションすることで、疎かになりがちな「社員」や「取引先」や「関連する大切な人々」に「思いを馳せイメージする」というサポートも欠かさない。

  • 取引先やお客様が「あなたの会社と取り引きができてホントよかった!」と満足し、感謝してくれている。
  • 社員たちが「この会社で仕事ができて、私だけじゃなく、家族も喜んでいます!」と満足し、感謝してくれている。
  • そして、家族や友人、恩師、先輩などあなたの大切な人々も「あなたの会社経営は大正解だね!これからも期待しているよ!」と応援してくれている。

会社経営に犠牲者が伴うことはある。しかし、それは「仕方がないこと」でも「当たり前のこと」でもない。日々、その犠牲の軽減や解消に努め、満足や感謝の状態に導く必要がある。

経営者の多忙な日常の中にあっても「みんな幸せになれるか?犠牲者はでないか?」を決して忘れることが無いように、経営理念に言語化して盛り込むように私はサポートすることに配慮している。

マーカスの経営理念

ひとつのサンプルとして、当社=株式会社マーカス・マネジメントの経営理念を紹介しよう。ちなみに、経営理念に「これが正解」というテンプレートは無いので、あくまでも一例としての紹介である。

「経営理念=3Gマネジメント」
全取引先・全社員・全役員の三者が
成長支援事業による社会貢献のための
相互支援と相互感謝を持続することで
心の豊かさを実感しよう!

この経営理念に含まれている私の「想い」は、

  • 私の事業によって、犠牲者や不幸者を出したくない!
  • 顧客に限らず、取引先や社員や家族も含めて、多くの人からマーカスのおかげで幸せ!と言っていただけるように少しでも貢献したい!
  • お互いにサポートし合い、お互いが「ありがとう!」の関係を持続したい!
  • お金?時間?働き方?人の価値観は人それぞれ。違う価値観を認め合い、それぞれの豊かさを実感できるように頑張ろう!

である。

私は「お客様・取引先様」と「社員」と「会社」の関係は「同じ距離」と考えて3Gを正三角形で表すようにしている。それぞれの「満足度」に優劣をつけたくない私の想いの表れだ。

極端な例ではあるが、この経営理念に賛同してもらえない場合、お客様であっても契約を中断・解消することがある。会社の収益を優先することを理由に、お客様の異なる価値観による理不尽な要求を受け入れ、それによって担当社員が嫌な思いをすることなど我慢できないからだ。

逆もしかりだ。権利意識を優先するあまりお客様の満足度を犠牲にするような社員も許さない。いずれも、私の「想い」に反するからである。そんな「想い」もこの経営理念には含んでいる。

絶対にやってはならないこと

最後に「やってはならないこと」を書き加えておこう。

一言でいうと「建前論」の経営理念だ。皮肉なこと?に、建前で「カッコいい経営理念」を掲げている経営者が最も「カッコ悪い」。

「心の本音」とは違う経営理念を掲げると、経営者の日常の言動とギャップがでるので「言ってることとやってることが違う人」になる。

経営者とのディスカッションを通じて「心の本音」に「社会貢献」「3Gの幸福」が見えないときがある。その場合、私は「もう少し時間をおこう」と、サポートを中断することにしている。

「本音ベース」でない経営理念の片棒を担ぐ気はない。なにより、その「うその経営理念」を見せられる社員さんやお取引先に申し訳ない、という罪悪感を持ちたくないのだ。

まとめ

以上、私が、マネジメント・コーチの現場で、どのように「経営理念作りのサポート」をしているかを紹介した。

簡単にいうと「社会の役に立ち、誰の幸福に貢献する会社なのか?」が誰にでも分かり易く言語化され、協力者や賛同者、さらに応援してくれる人々に「想い」が正しく伝わるなら「形」はなんでもよい。

ちなみに、時々「企業理念」や「経営方針」や「クレド」などとの違いを質問されることがあるが、誤解を恐れずに言うと、私は「どうでもいい」と答えることにしている(笑)。そのようなタイトルより「内容」であり、ここで紹介した「内容」になれば、そのような「細かな事」は網羅できる、と思ってるからである。

お役に立ちますように!

(参考記事)
「経営者の理念力」魅力的な使命と幸福を伝えるチカラ