経営者の想いを実現するための「経営計画」実務マニュアル

この記事のポイント

会社に関連する人々の幸福のため、経営者の想い通りの会社経営が持続している状態をゴール(=目的)とする「想い通り経営」。

この記事では「想い通り経営」を実現するための「経営計画」の策定実務の手順を整理して紹介しよう。

目的を実現するための「正しい計画」

マーカスのフレームワークの中でも頻繁に登場する「計画達成の方程式」は

(計画達成)=(正しい計画)×(正しい行動)

であるが、計画を達成する=目的を実現するためには「正しい計画」を立案し、その計画に沿って「正しく行動」することに尽きる。

この「正しい計画」とは(G)×(S)×(C)=(ゴール)×(シナリオ)×(キャスティング)の3要素が具体的に言語化されている計画のことである。何事であっても、その目的を実現するためには、誰がどうやってゴールに到達するか?を明確にしなければならない。

「経営計画」も例外ではない。「想い通り経営」というゴール(G)のために、誰(C)がどうするか(S)、を明確にすることが大切である。

「想い通り経営」のための「経営計画」は、この「正しい計画」のフレームに沿って策定していく。

STEP1:ゴール設定

長期、中期、短期に分けて明確にしよう

当然ではあるが、まずは「ゴール」を決めるところからだ。このゴールは「長期」「中期」「短期」に分けて整理する。

  • 長期:最終的に(または10年後)、どういう状態を目指しているのか?
  • 中期:3年後、どこまで実現しているのか?
  • 短期:1年後、どこまで実現しているのか?

つまり「大きな方向性」を示し「近未来はどこまで到達するのか?」と同じライン上で具体化することが大切だ。

例えば・・・
「大阪を出発して、1時間後に名古屋まで行くぞ!」
というフレーズと、
「3時間後に東京を目指すが、途中1時間以内に名古屋まで行く」
というフレーズ。
この2つを比べてみれば違いが分かると思う。

前者を聞いた人は「この社長は、名古屋を目標にしている」と誤解するかもしれない。それに対して後者は「最終的には東京を目指しているが、まずは名古屋なんだな」と正しく理解できるだろう。

このようにゴールは、長期、中期、短期に分けて明確にしよう。

ちなみに、このブログが目指している最終的なゴールは、3Gの幸福だ。会社に関連する3つのグループの人々、つまり「取引先・顧客のグループ」「社員とその大切な人々のグループ」そして「経営者自身とその大切な人々のグループ」の3つのグループの人々が、それぞれ相互に満足し、相互に感謝し、幸福感に満ちている状態だ。

したがって、社会貢献も利益もお金も名声も、すべて、これらは「手段」と位置付けている。「目的」と「手段」を混同しないように気を付けよう。

(参考)「想い通り経営」のための経営者の心技体

「規模」の目標を設定しよう

ゴールを社員や協力者と共有するために数値目標は欠かせない。正しく「規模感」を共有するためだ。一般的には「年商」「経常利益」「社員数」などの「数値」を用いるが、これらを長期、中期、短期で明確に設定しよう。

「状態」の目標を設定しよう

次に大切なゴール設定は「状態目標」である。「年商10億円」というような数値目標に合わせて「業界ナンバーワン」「地域ナンバーワン」「顧客満足度ナンバーワン」「給与水準業界ナンバーワン」「社員満足度ナンバーワン」「残業ゼロ」というように単純な数字と共に「どのような状態を目指すのか?」も併せて設定しよう。

あなたのゴールは魅力的か?

ゴール設定において最も大切なことだ。あなたが目指すゴールは、社員や取引先、あるいはあなたの家族など大切な人にとっても魅力的なゴールか?である。あなただけでなく、これらの人達にとっても目指すゴールが魅力的でないと、本当の協力は得られない。

「私の目標達成のために、あなたのことは考えてない」
「私の目標達成のために、あなたは犠牲になってくれ」
という計画には誰も賛同しないのは当然だ。

「魅力的なゴールのために、社長と一緒に頑張ろう!」という気持ちにさせることができる計画かどうか?だ。

「売上10億円を目指すぞ!」「もっと利益を出すぞ!」という目標設定そのものは当然である、悪くない。しかし、その目標達成によって、あなたや会社だけではなく、共に働く社員や取引先、そしてそれぞれの大切な人たちにとってどんな「いいこと」があるのか?をプレゼンテーションできるゴール設定をしよう。

難しく考える必要はない。「10億円達成の暁には、みんなで*****しよう!」を魅力的な言葉で埋めればよい。

経営計画が社内に浸透せず、なぜか盛り上がらない、冷めている、という残念な場面を多く見てきたが、その原因のほとんどは「ゴールが経営者以外の人々にとって魅力的でない」から、ということに注意して欲しい。

STEP2:シナリオの言語化

中期計画=36か月のシナリオ

次のステップは、ゴールに到達するための具体的な方法の明確化である。

一般的には「中期経営計画」というように、3年分のシナリオを具体的に言語化する。ここに根性やカンはいらない。むしろ邪魔である。リアリティーが重要だ。なぜか?理由は「説得力」が必要だからだ。社員や取引先が「なるほど!その方法なら実現しそうだ!」と思わないとチカラを結集できない。

シナリオは「月次」で言語化する。「今年中に***する」ではなく「今月は***する」という具合に、月々の行動計画に展開することでリアリティーが一段と高まる。また、この過程で「矛盾」も炙り出されるので必須だ。

「3年計画」は「36か月のシナリオ」に展開しよう。

「なぜ?なぜ?」を繰り返す

「なせ?なぜ?」を繰り返すことは、本質的な原因を突き詰めるときによく用いられる方法であるが、これを応用して「どうやって?」「そのために?」などを繰り返して、よりリアルなシナリオに仕上げていこう。

例えば・・・

「売上10億円を目指す」

(どうやって?そのために?)

「顧客を増やす!」

(どうやって?そのために?)

「営業力を高める!」

(どうやって?そのために?)

「営業マンのスキルを上げる!」

(どうやって?そのために?)

「・・・・・?」

このように、しつこくしつこく繰り返す。もし、言葉に詰まるところがあれば、そこが「断線」している。シナリオが途切れているところだ。行動が結果に結びつくように連続しているか?に注意して言語化していこう。

上記の例であれば、営業マンの営業力を高めて、顧客を増やすことで年商10億円を目指す、と一見具体的に見えるが、そもそも「どうやって営業マンのスキルを高めるのか?」が見えない。このシナリオでは「営業マンのスキル不足が原因で売上目標が達成できなかった」という結末になる可能性が高い、ということになる。

上記の例であれば、下記のような「具体的なシナリオ」を付け加えなければならない。

  • 営業マンに「がんばれ!」と言い続ける?
  • 外部講師を招いて「営業研修」を継続する?
  • 営業管理のためのアプリを導入する?
  • 援護射撃のための広告を増量する?
  • 商品パンフをリニューアルする?

などの具体的な「方法」を肉付けすることで、シナリオの説得力は高まっていく。

「なぜ?なぜ?」を繰り返すように「どうやって?そのために?」を繰り返そう。

36か月のシナリオに落とし込む

上記で具体的になった行動計画を「36か月のシナリオ」に落とし込むのであるが、私のコーチングの現場では、多くの経営者は「え?そこまで書くの?」と、驚きというより、内心「(めんどくさい)」という表情を見せる(笑)。

例えば・・・「営業マンの採用」というテーマがあるとする。黙って見ていると、ほとんどの経営者は「++年8月に採用」とシナリオに書き込む。私は「どうやって?」と突っ込む。ご承知の通り、人を採用する際には「どんな人材を?」「媒体は?」「予算は?」「面接は?」など、やることがたくさんあるからだ。なのに「採用」しかスケジュールに書いてないから私は突っ込むのだ。

「採用」は「小さなゴール」を書いたに過ぎない。「採用のためのシナリオ」が漏れているのだ。

上記のように8月に営業マンを採用したいなら、5月に募集要領を決めて、6月に求人広告を出して、7月に面接・選考して・・・という具合に、それぞれのプロセスを具体的に書き込まなければならない。だから「めんどくさい」という表情になるのだろう。

しかし、私のしつこい突っ込みによって、しぶしぶ?それを考えて書き込んだ後「自分の考えが浅かったことを反省してる」と照れ笑いしてくれるから私はコーチングをやめられない(笑)。

ちなみに、一般的にシナリオは「ガントチャート」にすることが多い。追々、このブログからもフォーマットをダウンロードできるようにしたいと考えているが少々お待ちいただきたい。

STEP3:誰が?のキャスティング

さて、ゴールへのシナリオが完成すれば、次はキャスティングだ。「誰が実行するの?」である。それぞれのシナリオの実行責任者・実行担当者を決めて、そして具体的に任命していく。

意外と疎かにされているのが任命の儀式。実行責任者・実行担当者本人と対面で任命することが大切である。当事者が「その気」になってくれないことには実行段階で諸問題が生じることが多くなる。まさに「経営者の想いを伝える場面」である。いわば「仏に魂を入れる作業」と言っても過言じゃない。私は、個人面談によって時間を使ってミッションを伝達することをお勧めしている。

また、この任命の場面において「現場の貴重な意見」を得ることも少なくない。そんな時は、極力、その貴重な意見を取り入れることも気を付けたい。時には、シナリオを変更する必要性も出ることがあるが、それによってさらにシナリオのリアリティーが増すだけではなく、担当責任者の参画意識や責任感が増すからだ。

STEP4:整合性のチェック

上記のプロセスにおいて、キャスティングの段階で「欲張りすぎてる」という壁に突き当たることが少なくない。シナリオ通りに実行すればゴールは見えるのに、そのシナリオの実行に問題が生じるのだ。

日常業務に加えて、経営計画のシナリオの実行という仕事が増え「キャパオーバー」が実行前に見えてしまうことがあるのだ。

よくあるケースであるが、例えば「上半期に実行すべきテーマ」を3つ任命するとする。一つ一つは半年あれば実行できるが、それが「3つ」となれば、18か月分の仕事を半年でやり遂げる、という無茶なミッションになってしまう、というようなケースだ。

多くの場合「振り出しに戻る」となる。つまり「3年後のゴール」のハードルが高すぎるので下げざるを得ない、ということになるのだ。

このように「ゴール」と「シナリオ」と「キャスティング」の整合性を確認したのちに「正しい計画」は完成する。

まとめ

以上「想い通り経営」を実現するための「経営計画」作成のプロセスを紹介した。残念ながら、ブログという限られた媒体ですべてを伝えることは困難であるが「なんとなくのイメージ」は掴んでもらえるのではないかと思う。

大切なことは、社員や取引先、そしてあなたとそれぞれの大切な人たちの幸福へのシナリオになっているか?の視点である。決して「独りよがりな計画」にならないように注意し、多くの賛同者が集うプレゼンテーションになるように頑張ってみよう。

今後、実際のワークシートなどをダウンロードしてもらえるようにブラッシュアップしていく予定なので待っていて欲しい。

お役に立ちますように!