私のマネジメント・コーチの仕事の中の一つである「経営計画の策定と運用」について紹介しよう。今は、20歳~40歳の若手経営者を中心にサポートしているが、その現場の雰囲気を感じていただければ幸いだ。
目次
「経営計画」の基礎知識
本題に入る前に「経営計画」の基礎的なことを整理しておこう。
「経営計画」は、一般的に「中期経営計画」といわれているものであり、私は「36か月のシナリオ」といっている。文字通り、36か月間の経営を計画するものである。
計画達成の方程式=正しい計画×正しい行動
マーカスのフレームワークの一つである「計画達成の方程式」。ゴールへ向かうための「正しい計画」を具体化・言語化し、それにそって「正しく行動・実行」すれば、必ず「目標」や「目的」を達成、実現できるという方程式である。「経営計画」は、このフレームワークの実務フォーマットの代表的な一例である。
3つの「経営計画」
私がサポートする「経営計画」には3つある。
- 経営者個人用(=マスタープラン)
- 社内公表用(=全社用・役職者用・部門長用など)
- 金融機関等提出用
経営者個人用のマスタープランは、全体を網羅する詳細の計画であり、そこには「秘密の作戦」や「経営者の個人的なこと」などが盛り込まれることもあるので「未公開」を前提として策定する。
コーチングの現場では、この「経営者個人用」を「経営計画の策定を通じた経営スキルのトレーニング」という視点と目的でサポートしている。
2つめの「社内公表用」は、マスタープランに基づいて、全社用、役職者用、部門長用など、対象や用途に応じて一部を抜粋したり、加筆して作成するものである。こちらは「人材育成」という視点と目的でサポートしている。
3つめの「金融機関等提出用」というのは、融資等で必要な部分だけを抜粋したり、要約して作成するものである。
「事業計画」との違い
私は「経営計画」と「事業計画」を使い分けている。「事業計画」は「単一事業」の計画であり、いわゆるビジネスプランなどと言われるものである。あえて表現すれば「経営計画」の一部が「事業計画」という具合である。
「経営計画」の策定サポート
「経営計画」は、ゴールまでの36か月の行動計画を明確にするものである。それを「正しい計画」として策定しなければならない。「正しい計画」とは、G:ゴール、S:シナリオ、C:キャスティングが明確な計画である。
STEP1:G:ゴールの設定と課題の明確化
コーチングは「3年後(=36か月後)にどのような状態になっていたいのか?」を経営者から引き出し、その「想い」を整理し、言語化するセッションから始まる。
ポイントは「MUST」ではなく「WANT」か?である。3年後に「こうあるべき」とか「こうでなければならない」ではなく「こうありたい!」という「本音の想い」が大切である。
そして、その「想い」を達成したり、実現するにあたって「不足していること」は何か?これが3年間で解決しなければならない「経営課題」である。
- 売上高目標は***、そのために解決すべき課題は***である。
- 組織目標は***、そのために解決すべき課題は***である。
- 人事目標は***、そのために解決すべき課題は***である。
- 利益・資金の目標は***、そのために解決すべき課題は***である。
というように、複数のゴールとそのために解決しなければならない課題を言語化していく。
STEP2:課題解決策の立案
次に、STEP-1で明確になった課題のひとつひとつについて、解決するための具体策を検討、立案していく。ポイントは
- 課題は、3年で解決できるか?
- 課題を解決すれば、必ず目的は実現できるか?
- 課題を解決すれば、必ず目標は達成できるか?
のディスカッションを繰り返すことである。
多くの場合、この課題解決のための新たな課題が発見されることも多く、十分な時間をかけて行うことが非常に大切でる。
例えば・・・
- 売上目標を達成するための課題は、営業マンの増員が必要
- 増員は容易か?
- 増員すれば解決するか?
↓ - 採用力や育成力も改善しなければならない
といった具合だ。
この部分を「雑」に過ごすと「未解決の課題」や「未発見の課題」が持ち越され、この後のプロセスは「絵に描いた餅」になってしまうことになるからだ。
STEP3:S:シナリオの立案
ゴール、課題解決策が明確になれば、そのための行動計画を36か月のスケジュールに落とし込んでいくことになる。これが「シナリオ」だ。
この時の注意点は、テーマごとの整合性である。簡単に言うと「新人採用」より先に「採用力」の改善が必要であるが、そのシナリオが逆転していないか?という具合だ。
売上計画と、それに対応する人員計画、組織計画、また、それに対応する採用、育成計画など、それぞれの整合性を確認していく。いわゆる「優先順位」だ。
STEP4:C:キャスティング
上記のシナリオの実行責任者の「配役」である。これで(G:何のために)+(C:誰が)+(S:何をするか)が明確になる。
この場合も「兼任の不整合」が起きていないかを再確認しなければならない。時間物理的にムチャな配役になっていないかを確認する。
STEP5:利益資金計画の立案
以上で「行動計画」が明確になるので、次に「数字化」していく。いわゆる「予算」であるが、同時に「予定貸借対照表」「予定キャッシュフロー表」が出来上がる。
以上で、経営者用の「36か月のシナリオ」が完成する。
ちなみに「ローリング方式」といって「経営計画」は、毎年アップデートするので「3年ごとに策定」ではなく「毎年策定」である。毎期「この先36か月のシナリオ」を上記の手順で策定してくことをサポートしている。
「経営計画」の運用サポート
「経営計画」の運用は、月1回のセッションによるディスカッションでサポートしている。各テーマについて「計画通りに進捗しているか?」の確認である。
前述したように(計画達成)=(正しい計画)×(正しい行動)である。もし、計画と行動が正しければ、計画通りに順調に進捗しているはずだ。
もし「計画通り」に進捗していないのであれば「正しい計画」ではなかったのか?「正しく行動」していないのか?についてインタビューを通じて確認していく。私とのセッションが「心地よいプレッシャー」になってる、という感想をいただくプロセスだ。
月次決算による「予実確認」も同時に行い、数字による進捗確認も行う。
なお、計画と大きくずれた場合は「計画の見直し」を行うことになる。
まとめ
以上、中小企業の若手経営者のコーチとして、現場で「経営計画の策定と運用」をどのようにサポートしているかを紹介した。
(計画達成)=(正しい計画)×(正しい行動)である。
つまり(策定サポート)×(運用サポート)による「想い通り経営」実現のサポートである。
ちなみに「計画を達成すること」は、当然重要であるが、私のコーチングは「経営実務のスキルアップ」を主目的としている。多くのコンサルタントのように「答え」のアドバイスは最小限にして「魚を与えるのではく、魚の捕り方を教えよ」という言葉があるように「答え」の出し方をトレーニングしてもらうことに注意している。時々「堀井さんは、何も教えてくれない!」と八つ当たり?されることがあるが(笑)私は「あなたのためだから!」と返している。
お役に立ちますように!