【業績連動型賞与の原資】中小企業の4つの事例

賞与の決め方は、多くの中小企業経営者が悩んだり不安を感じているテーマの大きな一つですね。そんな経営者にインタビューすると、異口同音「利益をみんなでシェアできる仕組みが理想なんだけど」といいます。

ここでは、中小企業が業績連動型賞与を検討する場合の最初のテーマである「何を指標にするか?=シェアする利益は何か?」についてその代表的な事例を4つ紹介します。

  • 売上を指標とする方法
  • 限界利益を指標とする方法
  • その他、独自の数字を指標とする方法
  • 前期比や予算比を加味する方法

あなたの会社に最もフィットする方法が見つかれば幸いです。

*想定している企業規模は、賞与の支給対象者が10名~100名程度の中小企業です。

中小企業で営業利益や経常利益が指標にならない理由

大手企業、特に株式を公開している企業が運用している業績連動型賞与の指標には営業利益や経常利益が最も多いと聞きますが、オーナー経営である中小企業は「前提条件」が全く違うので、これらを使うことは困難です。

「前提条件」というのは、会計が「公開」か「非公開」か、です。オーナー経営の中小企業においては、経営者の役員報酬や接待交際費など、あるいは様々な節税目的のコストなど「社員には見せたくない数字」があるので、多くの場合は決算書や試算表は非公開です。そのために営業利益や経常利益を指標とすることができないのです。

ただ、少数派ですが「営業利益か経常利益を指標にしたい」とリクエストしてくれる経営者もいますが、それでもボクは「ダメ」と引き留めます。

もうひとつの理由になるのですが、その場合は、経営者への分配も含めた制度設計をしなければならず、制度設計の難易度が非常に高くなるからです。いずれバージョンアップすることは否定しませんが、まずは「社員だけのルール」でスタートすることを提案します。

山分けの「山」、4つの方法

業績連動型賞与は、簡単に言うと「みんなで稼いだ利益を、みんなで分ける」という仕組みです。要するに「山分け」であり、原資となる「山」をどうするか?。この「何を山分けするか?」についてボクがサポートしている中から代表的な4つの事例を紹介します。

最もシンプルな方法、「売上高」を指標とする事例

(売上高)×(分配率)=(賞与原資)

経営者と社員の両者にとってもっともシンプルで分かりやすいのが「売上高」を指標とする方法です。

デザイン会社、設計会社、会計事務所など「仕入れがないビジネス」に適しています。

また、コストがほとんど固定費というような会社で、その増減が社員の活動や努力との関連性が低い場合も、コストを意識させる必要性が低いので、売上高だけで充分です。

なお、この方法は、粗利率が低い卸売業などの場合はお勧めしません。分配率の設定が非常に低い数値になり「たったこれだけ?」という誤解が生じやすいからです。(例えば、年商5億円、粗利益率10%という企業で、年間賞与が250万円であれば「売上高の0.5%を分配」となる。)

また、商品製品の販売業などで、売上高を指標にすると「逆ザヤ販売」で利益が減少しても、賞与は増える、という矛盾が生じてしまうので注意が必要です。

最も多い方法、「限界利益」を指標とする事例

(限界利益)×(分配率)=(賞与原資)
*限界利益=売上高-変動原価

ボクがサポートしている企業で最も多いのが「限界利益」を指標とする方法です。

「限界利益」とは「売上高」から仕入れや外注費など「変動原価」を差し引いた利益であり、業種を問わず採用しやすい指標です。

この「限界利益」を用いるメリットは、

  • 売上高だけではなく仕入原価や、荷造運賃などその他の変動原価にも社員の意識を向けることができる
  • 内製できるものについて安易な外注化を抑制することができる
  • 安易な値引き販売による増販拡販を防ぐことができる
  • 在庫ロスに意識を向けることができる

などですが、もちろん注意点もあります。

「変動原価」を求めるためには「在庫評価」の正確性が重要です。たな卸しに不安がある場合はこの方法を断念するか「想定限界利益率」を採用して簡易的な組み立てにすることにしています。

(限界利益)×(分配率)=(賞与原資)
*限界利益=売上高×想定限界利益率

おススメは「独自の数字」を指標とする方法

(限界利益-複数のコスト)×(分配率)=(賞与原資)

「業績連動型」の本来の目的の一つ「社員の経営参画意識を高める」ということを考えれば「独自の数字」を用いることをお勧めしています。

「独自の数字」とは「限界利益」から「社員の努力や創意工夫で削減可能な複数のコスト」も控除した数字です。

例えば、旅費交通費、消耗品費、水道光熱費など、コスト意識を持ってほしい科目をピックアップします。こうすることによって交通費や消耗品の無駄遣いをすれば、賞与が減る、という仕組みとなります。

デメリットがあるとすれば、計算対象が増えることによる「手間」。でも「手間」をかけるだけのメリットはあるので、お勧めしています。

前期比や予算比を加味する方法

これは「分配率」にインセンティブを利かせるときに採用している方法です。

採用した指標が、前期より多い場合、あるいは、予算(目標)をクリアした場合に「分配率」に「一定の%」を加算する方法です。言うまでもなく「前期クリア」「予算クリア」へのモチベーションを高めてもらう狙いで取り入れる方法です。

ただし、理論上、下記のようなことが想定され、これをデメリットと考える経営者もいるので補足しておきます。

1年目2年目3年目4年目
売上高100150180160
分配率加算なしありありなし

このような場合、4年目は前期割れしたので分配率加算はありません。2年目の150を超える売上高なのに加算がない分、2年目に比べて分配率が下がります。

このようなシミュレーションを重ねて検討することを忘れないでくださいね。

まとめ

以上、業績連動型賞与を設計するときの「何を指標にするか?」について、ボクがサポートしている中小企業での事例を4つ紹介しました。

  • 売上を指標とする方法
  • 限界利益を指標とする方法
  • その他、独自の数字を指標とする方法
  • 前期比や予算比を加味する方法

どれを採用するか?に2つの視点があります。一つは「どれがもっとも公平か?」、もうひとつは「どれがもっとも分かりやすいか」です。

実務上、この2つのバランスがとても大切であり「公平性」を求めるばかりに「分かりにくい制度」になったり、反対に「分かりやすさ」を優先しすぎて「公平」でなくなる、ということがよくあります。

いずれも試してみて、慎重に比較検討してみてください。

お役に立ちますように!

30年以上、税理士として数百名の中小企業経営者と向き合ってきた経験から、独自のメソッドで成長志向経営者の「想い通り経営」をサポート。特に、管理会計を活用した業績分配制度の設計、運用フォローに定評がある。20~40代の若手経営者の兄貴的存在として多くの支持を得ている。1961年生丑年蠍座。