【業績連動型賞与】デメリット・リスク・失敗事例

中小企業の業績連動型賞与制度には、業績不振による原資不足や、情報漏洩、さらに人事評価の手間やコンサルティングコストなどのデメリットやリスクもあります。

失敗事例を含めて知っておきたいマイナス面を解説します。

業績連動型賞与の主なデメリットとリスク

業績連動型の給与賞与制度は「会社の業績管理と人材育成を連動させる仕組み」であり多くのメリットがあります。

  • もう、給与や賞与の計算で悩まなくてよい。
  • 業績に連動させて人的コストの上限設定ができるので、経営リスクが軽減される
  • 正当評価に応じた待遇となるため、労使の信頼関係の強化につながる
  • 信賞必罰、優秀な人材ほど納得性のある制度

ただし、一方で次のようなデメリットやリスクを心配する声もあります。

  • 業績不調の場合、賞与ゼロの可能性があり、モチベーションへの影響が心配だ
  • 人事評価のための個人面談や評価集計等、手間がかかるのでは?
  • 業績を社内公表するので、その情報が社外に漏洩するリスクがあるでのは?
  • 導入コスト・運用コスト(社内コスト・社外コスト)が安くない?

それぞれについて、対処法を含めて紹介します。

業績不調で賞与原資がなくなるリスクへの対処

業績連動型なので、良い時も悪い時もあります。残念ながら想定を超えて業績が悪く、ルール通りに計算すると「ゼロになる」ということがありえます。

業績が悪くても毎日真面目に一生懸命頑張っている社員に対して「業績が想定以下なので、今回の賞与はありません」と言いづらい・・・という気持ちはよくわかります。確かにルールでは「ゼロ」なんですが・・・。

こんなとき、社員の多くは「業績連動型だから仕方がない・・・」と「頭」では分かっていても「とはいえ・・・」と、彼らの「気持ち」は別方向に向いています。

このリスクへの対処法として「下限設定ルール」を盛り込むことがよくあります。最低保証額の設定です。

さすがに「ゼロ」はモチベーションへの影響がよくない、と考える場合「どんなに業績が悪くても最低保障として***円は支給する」という一文をルールに盛り込んでおく、という方法です。

ただし、ボクは、この場合は「逆」もセットします。つまり「上限設定」です。想定をはるかに超えた好業績の場合、破格の賞与になる可能性があるからです。

ボクは、当社で業績連動型を導入する際に社員全員の意見を聞きました。

  • 好業績の場合、青天井にするなら、悪い時はゼロとなることもある
  • ゼロを避けるなら、上限も設定する。
  • 上限下限を設けるか、設けないか、君らが決めてくれ

そのときに彼らが選択したのは「青天井&ゼロ方式」でした。実際、数年前にゼロになったことがありましたが、大きな問題は生じませんでした。

このように業績不調で賞与原資がなくなる場合のルールはトラブル回避のために最初に決めておくことが大切です。

人事評価のための個人面談や評価集計等の「手間」が嫌なら導入しないほうがよい

業績連動型に限ったことではありませんが、評価の結果が社員の給与や賞与に直接的に連動するので、より慎重な人事評価が不可欠です。でも、それを「手間」と感じる経営者は少なくありません。

でも「人事評価」を「手間」と考える経営者は(冷たいようですが・・・)業績連動型は導入しない方がいいです。業績連動型給与賞与制度の運用が新たなストレスになって、いずれ「やめたい」と思うようになります。実際、この相談は年に数回あります。

業績連動型のコンセプトは「人材の成長を願い、その成長の成果をみんなで山分けしよう!」が大切な基本コンセプトです。このコンセプトを正しく理解&納得できれば「手間」と感じることはないはずで、むしろ、成長する社員の評価が楽しみになるはずです。

情報漏洩のリスクは避けられない

「情報漏洩」は業績連動型ゆえのリスクです。

業績を社内に公表するということは、全社員がそれを知っている、ということであり、会社の業績が社外に漏れることを否定できません。「人の口に戸は立てられぬ」というように、ゼロリスクにはできません。社員たちのモラルを信じるしかない、というのが現実です。

それでも、可能な限りのリスクヘッジができるとすれば、業績の公表は「口頭で」ということくらいです。情報公開に当たっては「業績報告書」を人数分プリントして会議にて配布し、会議終了後は回収する、という具合です。

ボクが経験した「苦い思い出」を紹介すると・・・「社員の家族から漏れた」という事例があります。

夫のボーナスに奥さんは興味津々・・・当たり前ですね。しかし、この奥さんが「井戸端会議」でついつい嬉しくて小学校のママ友さんたちに話してしまった、という例です。これは、たまたま「発覚」した例ですが、そうでないことも少なからずあると思います。

導入コスト・運用コストは安くない?

導入コスト、運用コストですが、その「高いか」「安いか」の感じ方は人それぞれです。

当社は、設計・導入・運用のサポートに月額8~38万円(人数や既存のルールなどによって幅があります)を頂戴していますが、多くは「安い」とご評価いただいています。反対に、見積もり段階で成約しないケースは「費用が出せない」という理由がほとんどです。

こればっかりは、お客様に決めてもらうしかありません・・・。

ただ「成長支援型の人事評価の制度を運用することで、社員が成長し、業績に応じて気持ち良く待遇を決めることができるようになる」ということの価値の対価として検討してもらえれば、と思います。

人事評価の失敗例

業績連動型に限ったことではなく「人事評価」にまつわる失敗例を紹介しておきます。

評価基準(=スキルチェックシート)の公表が遅れたケース

一日も早く業績連動型を導入したかった経営者が「見切り発車」したケース。

年末近くになって「冬の賞与は、業績に応じて支給します。その分配は、この評価基準で行います」と、評価基準(=スキルチェックシート)を配布しましたが、そのタイミングが悪かった・・・支給の直前での公表だったのです。

これは、いわゆる「後出しじゃんけん」です。社員側からすると「それって、最初に教えてもらわないと!」「ずるい!」と感じるのは当然です。せっかくの業績連動型の「第一印象」が悪くなってしまった例です。

その他の失敗例

お手盛り支給による失敗

業績連動型のルールに従って計算した結果を見た経営者、どうもイメージしていた金額とは違ったようで、特定の複数の社員に「社長賞」として加算しました。いわゆる「お手盛り」です。加算した社員には 「加算したのはあなただけだから、みんなには内緒だよ」と一言加えて・・・。

この経営者は、この社長賞をもらった社員は喜んでくれる、と信じていました。しかし、後日談ですが「僕は、あの時、社長が信用できなくなり、社長賞をもらったことが、他の同僚に対して申し訳なく思い、複雑でした。」と言っているのを聞いて、ボクも非常に残念な思いをしたということがありました。

その後、「業績連動型って建前だ。結局、社長がエンピツなめなめして決めている」・・・という社内の空気が数年続きました。

決して、ルールを逸脱した特別支給をしてはならないという出来事でした。

精度の低い月次決算による失敗

業績に連動させて分配をする以上、言うまでもなく業績計算の正確性は非常に重要です。

会計データを基にして業績を社内に公表し、それが、社員の待遇に直結していることを経理担当者や顧問税理士事務所には正しく理解してもらい、慎重に協力してもらうよう働きかけることを忘れてはなりません。

「精度の高い月次決算」は、制度への信頼感を保つ上で非常に重要です。

念のため「月次決算」の留意点をいくつか記載しておくので参考にしてみてください。

  • 在庫は毎月計上する。
  • 減価償却は毎月計上する
  • 月末が土日になるなどの理由で当月分の計上が翌月にずれこまないよう、未払計上する

などが一般的ですが「月次決算」という通り、業績に影響を及ぼすような科目は、毎月「決算レベルの会計処理」を行うことが重要です。

*月次決算については、こちらのサイトも参考にしてみてください。

まとめ

以上、業績連動型賞与のデメリット、リスク、そして失敗例を紹介しました。

ご覧いただいたように、いいことばかりではありません。メリットとデメリットの両面をふまえて検討していただければ、と思います。

もうひとつ!最後にとても大切なことを書き添えておきます。

「人事の制度は簡単に変えられない」ということ。人事制度がコロコロ変わると、社員の心は会社・経営者から離れていきます。導入には慎重に取り組んでくださいね!

お役に立ちますように!

30年以上、税理士として数百名の中小企業経営者と向き合ってきた経験から、独自のメソッドで成長志向経営者の「想い通り経営」をサポート。特に、管理会計を活用した業績分配制度の設計、運用フォローに定評がある。20~40代の若手経営者の兄貴的存在として多くの支持を得ている。1961年生丑年蠍座。