【業績連動型賞与】4つのデメリットとリスク、そして3つの失敗事例

中小企業の業績連動型賞与制度には、業績不振による原資不足や、情報漏洩、さらに人事評価の手間やコンサルティングコストなどのデメリットやリスクもある。失敗事例の含めて知っておきたいマイナス面を解説しよう。

業績連動型賞与の主なデメリットとリスク

業績連動型は、人事評価や給与計算、賞与計算という個別のテーマではなく「会社の業績管理と人材育成を連動させる制度」でありメリットは多い

  • もう、給与や賞与の計算で悩まなくてよい。
  • 業績に連動させて人的コストの上限設定ができるので、経営リスクが軽減される
  • 正当評価に応じた待遇となるため、労使の信頼関係の強化につながる
  • 信賞必罰、優秀な人材ほど、納得性のある制度

しかし、反対に次のようなデメリットやリスクを心配する意見もある。

  • 業績不調の場合、賞与ゼロの可能性があり、モチベーションへの影響が心配だ
  • 人事評価のための個人面談や評価集計等、手間がかかるのでは?
  • 業績を社内公表するので、その情報が社外に漏洩するリスクがあるでのは?
  • 導入コスト・運用コスト(社内コスト・社外コスト)が安くない?

それぞれについて、対処法を含めて紹介しよう。

業績不調で賞与原資がなくなるリスクへの対処

業績連動型なので、良い時も悪い時もある。残念ながら想定以上に業績が思わしくなく、ルール通りに計算すると「ゼロになる」ということがありえる。

業績が悪くても毎日真面目に一生懸命頑張っている社員に対して「業績が想定以下なので、今回の賞与はありません」と言いづらい・・・という経営者は少なくない。確かにルールでは「ゼロ」なんだが・・・。

こんなとき、社員の多くは「業績連動型だから仕方がない・・・」と「頭」では分かっていても「気持ち」は別方向に向いている。

このリスクへの対処法として「下限設定ルール」を盛り込むことが多い。いわゆる最低保証額の設定である。さすがに「ゼロ」はモチベーションへの影響もよくない、と考える場合「どんなに業績が悪くても***円は支給する」という一文をルールに盛り込んでおく、という方法だ。

ただし、この場合「逆」もセットが望ましい。つまり「上限設定」だ。想定をはるかに超えた好業績の場合、破格の賞与になる可能性がある。

私は、当社で業績連動型を導入する際に社員全員の意見を聞いた。

  • 好業績の場合、青天井にするなら、悪い時はゼロとなることもある
  • ゼロを避けるなら、上限も設定する。
  • 上限下限を設けるか、設けないか、君らが決めてくれ

彼らが選択したのは「青天井&ゼロ方式」だった。実際、数年前にゼロになったことがあったが、問題にあるようなクレームはなかった。

このように業績不調で賞与原資がなくなる場合のルールは最初に決めておくことをお勧めしている。

人事評価のための個人面談や評価集計等の「手間」が嫌なら導入しないほうがよい

人事評価は業績連動型に限ったことではないが、評価の結果が社員の給与や賞与に直接的に連動するので、より慎重な人事評価が不可欠である。

そういう意味で、非連動型に比べて神経を使うことになり、それを「手間」と感じる経営者は少なくない。

この業績連動型に伴う「人事評価」を「手間」と考える経営者は、冷たいようであるが、業績連動型は導入しない方がよい。業績連動型の運用が新たなストレスになり「やめたい」と思うようになる。実際、この相談は年に数回ある。

業績連動型のコンセプトは「人材の成長を願い、その成長の成果をみんなで山分けしよう!」が基本である。このコンセプトを正しく理解すれば「手間」と感じることはなくなり、むしろ、楽しみになるはずだ。

情報漏洩のリスクは避けられない

「情報漏洩」は業績連動ゆえの、この仕組みが持っている特性上のリスクである。

業績を社内に公表するということは、全社員がそれを知っている、ということであり、会社の業績が社外に漏れることを否定できない。「人の口に戸は立てられぬ」という諺があるように、ゼロリスクにはできない。社員たちのモラルを信じるしかない。

それでも、できる限りのリスクヘッジができるとすれば、業績の公表は「口頭で」ということくらいだ。情報公開に当たっては「業績報告書」を人数分プリントして会議にて配布し、会議終了後は回収する。

私が目の当たりにした苦い思い出を紹介すると「社員の家族から漏れた」という事例がある。夫のボーナスに奥さんは興味津々・・・当たり前だ。しかし、この奥さんが「井戸端会議」でついつい嬉しくて小学校のママさんたちに話してしまった、という例だ。これは「発覚」した例であるが、そうでないことは少なからずあると思われる。

導入コスト・運用コストは安くない?

率直に言おう。「高い」「安い」の感じ方は人それぞれである。100万円を安いと思う人、高いと思う人がいる。

当社は、設計・導入・運用のサポートに月額8~38万円(人数や既存のルールなどによって幅がある)を頂戴しているが、多くは「安い」とご評価いただいている。反対に、見積もり段階で成約しないケースは「費用が出せない」が多い。

こればっかりは、お客様に決めてもらうしかない、と思っている。

ただ、高いと思う人は「成長支援型の人事評価の制度を運用することで、社員が成長し、業績に応じて気持ち良く待遇を決めることができるようになる」ということの価値の対価として検討してもらえれば、と思う。

人事評価の失敗例

これは、業績連動型に限ったことではなく「人事評価」にまつわる失敗例だ。

評価基準(=スキルチェックシート)の公表が遅れたケース

一日も早く業績連動型を導入したかった経営者が「見切り発車」したケースである。

年末近くになって「冬の賞与は、業績に応じて支給します。その分配は、この評価基準で行います」と、評価基準(=スキルチェックシート)を配布した。タイミングが悪い。支給の直前での公表だ。

これは、いわゆる「後出しじゃんけん」である。社員側からすると「それって、最初に教えてもらわないと!」「ずるい!」である。せっかくの業績連動型の第一印象が悪くなった例である。

その他の失敗例

お手盛り支給による失敗

業績連動型のルールに従って計算した結果を見た経営者、どうもイメージしていた金額とは違ったようで、特定の複数の社員に「社長賞」として加算した。いわゆる「お手盛り」だ。加算した社員には 「お前だけだから、みんなに言うなよ、内緒だよ」と一言加えている。

この経営者は、この社長賞をもらった社員は喜んでくれる、と信じていた。しかし、後日談であるが「僕は、あの時、社長が信用できなくなり、社長賞をもらったことが、他の同僚に対して申し訳なく思い、複雑でした。」と言っているのを聞いて、私も非常に残念な思いをした事例である。

その後「業績連動型」って建前だ。結局、社長がエンピツなめなめして決めている・・・という社内の空気が数年続いた。

決して、ルールを逸脱した特別支給をしてはならない。

精度の低い月次決算による失敗

業績に連動させて分配をする以上、言うまでもなく業績計算の正確性は非常に重要である。

会計データを基にして業績を社内に公表し、それが、社員の待遇に直結していることを経理担当者や顧問税理士事務所には正しく理解してもらい、慎重に協力してもらうよう働きかけることを忘れてはならない。

精度の高い月次決算は、制度への信頼感を保つ上で重要である。

念のため「月次決算」の留意点をいくつか記載しておくので参考にしてほしい。

  • 在庫は毎月計上する。
  • 減価償却は毎月計上する
  • 月末が土日になるなどの理由で当月分の計上が翌月にずれこまないよう、未払計上する

などが一般的であるが「月次決算」という通り、業績に影響を及ぼすような科目は、毎月「決算レベルの会計処理」を行うことが重要である。

まとめ

以上、業績連動型賞与のデメリット、リスク、そして失敗例を解説した。

ご覧いただいたように、いいことばかりではない。メリットとデメリットをよく検討していただければ、と思う。

もうひとつ、最後にとても大切なことを書き添えておこう。

「人事の制度は簡単に変えられない」である。人事制度がコロコロ変わると、社員の心は会社・経営者から離れていく。導入には慎重に取り組んで欲しい。

お役に立ちますように!

堀井弘三
堀井弘三

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