「経営者の分配力」公正公平に成果を分かち合うチカラ

この記事のポイント

賞与の季節になると「どうやって決めよう?」と憂鬱になっていないだろうか?

もしそうならば「分配力」を学ぶ良い機会かもしれない。

「想い通り経営」に必要な「経営者の心技体」。ここでは「技」の中でも経営スキルの大切な一つ「経営者の分配力」について、その大切さと、改善のヒントを紹介する。

「分配力」が足りない経営者に起きる3つの不都合なこと

「心技体」の「技」は、「基礎スキル」と「経営スキル」の2つに分けているが「経営スキル」は、経営者必修の大切な実務スキルだ。

心技体

その1つである「分配力」は「成果を可視化し、正しい評価によって公正公平に分配するチカラ」と定義している。

この「分配力」が不足していると、次のような不都合が生じることがある。

毎回、賞与の金額で悩んでしまう

「賞与」が社員たちのモチベーションに大きく影響することは痛いほど分かっている。だからこそ経営者は悩む。決してケチりたいわけではない。できることならなるべく多く支給して彼らの喜ぶ顔を見てみたい。

そこまで思っていても悩む。儲かっていても、そうでなくても悩む。悩んでいる間に、支給日は迫ってくる。自分なりに「基準」を考えて、その「基準」にそって金額を決定する。しかし、まだ不安は解消されない。支給しても「顔色」が気になる。

「分配力」が不足していると、こんなことを毎年繰り返すことになる。

借金してまで賞与を支給して、残るのは「孤独感」

「世間(他社)は、どれくらい出しているのだろう?」と周りを気にしながら「見劣りしない金額」を支給することにした。ところが、会社の利益はほとんどなくなった・・・。

最悪、赤字であるにも関わらず「賞与ゼロ」というわけにはいかないので銀行に相談して「賞与資金」を借金してまで支払うことにする。借金してまで賞与を支給したんだ、と心のどこかで「分かってくれよ」という淡い期待が芽生える。ところが、結果は「孤独感」が増すばかり・・・。

気持ちを乗せて大盤振る舞いしたのに・・・

今期は予算も達成し、目標以上の利益も出たので「みんなよく頑張ったから、いつもより多めの賞与を支給しよう!」とか「特別に決算賞与も支給しよう!」と決めて、経営者も社員達も「大盛り上がり」。微笑ましい光景だ。

ところが、1年後「一転」する・・・。

今期は「程よい利益」に収まったので、それに見合った「程よい賞与」を支給しよう・・・。ところが「去年より少ない」「年収が下がった」「去年と同じように、いや、去年以上に頑張ったのに、なぜ、賞与が減るの?」と、1年前のことはすっかり忘れた社員達は「浮かない顔」。

仇になって帰ってきた大盤振る舞い。涙も枯れてしまいそうだ。

メンバーと成果を分かち合う経営者の「分配力」、3つの大切な視点

この「分配力」が優れている経営者には大切な共通点がある。そのキーワードは、「仲間意識」「人事評価」「管理会計」の3つだ。もし、この「分配力」に不安を感じるのであれば、是非、この3つの視点について自問自答してみよう。

みんなで公正公平に分ける、という仲間意識

まず、最初は「仲間意識」だ。「分配力」が優れいている経営者は「給与・賞与を社員に払う」ではなく「全員で得た成果は、全員で分配する」という意識・考え方の人が多い。経営者と社員は「親分子分」の「関係」ではなく「仲間」だという意識が強いのだ。

したがって、給与や賞与で悩むことがあっても「いくら支給しようか?」と悩むのではなく「どうやって分けようか?」と悩む。このような経営者の下で働く社員たちは「給与や賞与は会社からもらうもの」とは思っていない。「給与は賞与はお客様からもらうもの」と考える。

つまり、利益はお客様からもたらされたものであり、この利益は会社のみんなで頑張った得た成果に他ならない。会社は、この成果を分配する立場に過ぎず、したがって「給与や賞与は(間接的に)お客様から頂いたもの」という考え方である。

社員たちがこのような意識・考え方を持っているのは、仲間意識を持った経営者の日頃からの言動があり、それが理想論や建前論ではないことを表す実務的な成果分配の仕組みの運用の下で働いているからである。

公正公平な人事評価を運用するチカラ

2つ目のキーワードは「人事評価」である。仲間同士で公正公平に分配するための道具として「人事評価」は欠かせない。仲間同士で分配するといっても、それが経営者の「感覚」によるものであれば、それは結果として「親分子分」の関係による「支給」と変わらない。

仲間同士による分配が公正公平であるという納得感を得るためには、そもそも人事評価が公正公平である必要がある。「分配力」が優秀な経営者は、この公正公平な人事評価を実務的運用するチカラを持っている。

管理会計を正しく理解するチカラ

3つ目のキーワードは「管理会計」。公正公平に成果分配するためには、そもそも「成果」を公正公平に算出しなければならない。「管理会計」は、そのための必須ツールである。

「分配力」が優秀な経営者は共通して「数字に強い」。全員で得た成果として適正な数字は何なのか?を正しく求めることができる。

説明の都合上、少々極端な例を紹介しよう。

「経常利益」は「分配する成果」として適正か?答えは「NO」だ。なぜなら経常利益を計算する過程で、役員報酬や接待交際費、節税目的の生命保険料など、社員達にはどうすることもできないコストが含まれているからだ。

経営者が多額の役員報酬を取れば、当然、経常利益は少なくなる。もし、経常利益を分配するための成果とするなら「親分が取った後の残り」という数字になってしまう。これでは「仲間」として納得できないだろう。

このように、一般の「財務会計」の指標は使えないことが多く、独自の会計、つまり「管理会計」による成果の把握が必須となる。

「分配力」が優秀な経営者は、このロジックを正しく理解し、実務運用するための知識と経験を持った人が多い。

経営者として「分配力」が優れていることの幸福

改めて、経営者として「分配力=成果を可視化し、正しい評価によって公正公平に分配するチカラ」が優れていることの幸福を考えてみよう。つまり「経営者の分配力が優れている」とは、どういう状態なのか?だ。3つの視点に照らし合わせて表現すると次のようになる。

「成果」と「個々の貢献度」を正しく評価することで
利益も損失も仲間同士で公正公平に分配し
給与や賞与で悩むことがない状態

本質は、このような自分の状態を「幸福」と感じる「心」を持っているか?である。このように「公正公平に成果を分かち合う」ということが「建前論」と感じてしまうならば残念ながら「想い通り経営」は実現できない。

「経営者の分配力」は、「想い通り経営」に不可欠な「技」としてとても大切なチカラの1つだ。

あなたは何点?

1点:理解レベル
このチカラについて「理解」はできるが「納得・賛同」はできない。

2点:納得・賛同レベル
このチカラが必要なことは「納得・賛同」できる。しかし、身につけるには自信がなく、それによる不都合は受け入れるしかない。

3点:行動レベル
このチカラ不足によると思われる経営上の不都合が起きているので、このチカラを身につけようと目下「トレーニング中」である。

4点:習慣レベル
このチカラ不足が原因の経営上の不都合は起きていないので、この考え方、行動は習慣化しており合格レベルだと思う。

5点:指導者レベル
このチカラは当社の管理者や幹部クラスにも必要なので、自らが模範となって指導している。

「分配力」をトレーニングする方法

さて、ここまで読んで「心が痛い」と感じた人、つまり「自分には分配力が不足しているな」という自覚症状があれば早速トレーニングを始めよう。

視点転換

前述したように「分配力」の前提は「仲間意識」である。念のために書き加えておくと、この「仲間意識」は「全員で和気あいあい」という意味ではない。当然であるが、社員は経営者の子分でもなければ、奴隷でもない。「経営理念の実現のために共に汗する仲間たち」である。まずは、この考え方に違和感を感じることなく、納得できるか?である。もし、納得できないのであれば「視点転換」しなければならない。これは、考え方であるのでトレーニングの対象ではなく、トレーニングの前提である。

社員のニーズを知ること

「分配力」を高めるためには「貢献度」を正しく評価しなければならない。最も貢献した者には、最も分配し、それなりに貢献した者には、それなりに分配する。この貢献度を計る手段が「人事評価」である。そのための経営者の仕事は

  • 成果とは何か?
  • 貢献とは何か?

を、自らの言葉で説明しなければならない。そのためのトレーニングは「インタビュー」だ。一人で考えると「親分」としての独りよがりな定義に至る危険性がある。尊重すべきは「仲間の意見」である。一人一人の社員に「どのような成果を評価してほしいか?」についてインタビューを繰り返す。個々の意見を聞いているうちに「何を評価されたいと思っているのか?」「どのように分配すれば彼らは納得するのか?」「どのようにして間違った考え方を正すことができるのか?」が見えてくるはずだ。この繰り返しがトレーニングになるので、是非、実行してほしい。決して、一人で考えてはならない。

数字に強くなること

「成果」は「数字化」することで、明確になり、それが納得感の土台になる。分配役の経営者が数字に弱ければ話にならない。「数字」に強くなろう。このトレーニングは、別稿に詳しく紹介しているので、そちらを参考にしてほしい。

参考:「経営者の会計力」数字で語るプロ顔負けのチカラ

以上を実行すれば、必ず「分配力」は高まる。「考え方」と「行動」を変えて「結果」を変えよう!

【参考】習慣化のステップ
  • 理解レベル:理解できる。
  • 納得レベル:納得でき、賛同もできる。
  • 行動レベル:高めなければならない=MUST)と思い行動を続ける
  • 習慣レベル:MUSTからWANT(=高めたい)に変化する

まとめ

以上、経営者の分配力「成果を可視化し、正しい評価によって公正公平に分配するチカラ」を紹介した。大切な視点は「仲間意識」「人事評価」「管理会計」だ。「想い通り経営」を実現するための「経営者の心技体」の大切な1つである。実務的には「業績連動型給与賞与制度」の設計・導入・運用を行うことになるが、その実務的詳細は、別稿を参照してほしい。

経営者の「考え方」が変われば、「行動」が変わり、望ましい「結果」に変わる。是非、参考にしてみてほしい。

お役に立ちますように!

【このブログについて】「若手経営者のための経営支援ブログ」