人事評価は運用できてナンボ!シンプルがよい!

経営がうまくいかないときに確認すべき32のチェック項目

ボクは、中小企業経営者のコーチとして様々な人事評価の現場に立ち会っていますが、その経験上「中小企業の人事評価基準は、絶対にシンプルがよい」と思っています。

中小企業の現場で人事評価制度を運用するのは「経営者本人」か、もしくは「側近」の人たちです。誤解を恐れずに言うと彼らは「人事評価の専門家」ではありません。

人事評価制度は「正しく運用できてナンボ」です。

コンサルタントや専門家が作った素晴らしいツールも正しく運用できなければ宝の持ち腐れとなってしまいます。

この記事では、ボクが現場で活用している「マーカス式人事評価基準」を紹介するので参考にしてみてください。

人事評価の2つの目的「社員の成長」と「経営者の成長」

中小企業であっても「人事評価制度」が必要なことは言うまでもありません。本題に入る前に「人事評価の目的」を確認しておきます。

まず、そのひとつは「社員の成長」です。

社員たちは「奴隷」ではありません。ゴマンとある会社のなかで人生の大半を過ごす職場としてあなたの会社を選択してくれた貴重な人材です。あなたの事業目的の実現のために毎日出勤して頑張ってくれる大切な「人材」です。

そのような彼らの日常の頑張りを正しく評価し、それに見合った待遇とすることは「経営者の誠意」です。だから「人事評価制度がない会社」に出会うと、ボクは「誠意がないな」と思います。

雇い主として「社員の成長を支援し、その成果に見合う待遇を用意し、彼らの幸福に貢献する」という視点を忘れてはなりません。これは企業規模に関わらず経営者が必ず持っておくべき大切な視点だとボクは考えています。

そういう意味で「2つめの目的」があります。それが「経営者の成長」です。

人を指導し、人を評価をするという仕事は簡単ではありません。だからこそ「人事評価」はリーダーとしてのトレーニングの機会でもあります。

人材の成長支援を目的とする人事評価制度を真面目に運用すれば「経営スキル」は飛躍的にアップすることは間違いなく、「経営者の成長」を「人事評価の目的」とする理由です。

(参考記事)【人事評価】最大メリットは「経営者の成長」である

「人事評価」の正しい運用とは?

「人事評価制度」を正しく運用すれば必ず社員は成長します。

逆に、どれだけ立派な人事評価制度であっても正しく運用しなければ、社員は期待通り成長しません。

正しい運用とは、PDCAサイクルを回すことです。

PPlan人事評価基準の設定
=経営者が望み、期待する「当社の社員としてのあるべき姿」の言語化
DDo社員=日常の業務での実践
評価者=評価基準にそった観察
CCheck人事評価
=成長課題の発見(あるべき姿に対して何が不足しているか?)
AAction課題解決のサポート
  • 経営者自らがゴールを示し
  • 個々の社員がそのゴールまでの道のりの「どのあたりにいるか?」を本人と共有し
  • 個別にゴールのための成長課題の解決をフォローをすることで成長をサポート

人事評価はこのための「道具・ツール」です。

だから「正しくない運用」をイメージすると次のようになります。

PPlan人事評価基準が「建前論」や「一般論」であり
経営者が期待する「当社の社員のあるべき姿」とはズレている、異なっている。
・経営者自身が「建て前」と思っている評価基準
・とりあえず「カッコをつけただけ」の評価基準
・そもそも経営者が「望む人材像」を明確にできていない
など・・・
DDo評価者が「人事評価基準」に基づく「観察」をしていない
CCheckせっかく「人事評価基準」があるにも関わらず、それとはズレた「感覚」で点数をつける
AAction評価点をアップする教育研修等のフォローの仕組みがなく
社員の「自助努力」という言い訳で育成放棄。

こんな人事評価ならやらない方がマシです。いや「やってはならない!」です。

  • 評価基準そのものに経営者の想いが反映されていない
  • 評価のための観察をしていない
  • 評価基準の「各段階の定義」は無視して採点
  • 点数が低くても放置・・・

こんな「ひどい環境」でも経営者の望む人材として成長する人は極々一部であり、それは「ただのラッキー」なのです。

念のため書き添えておくと「こんな面倒な人事評価制度」を「正しく運用しなくてもよい場合」もありますが、それは「経営者が人材の成長を求めていない場合」だけです。

正しく運用するためにシンプルがよい

ボクも「理想」は「レベル(難易度)が高い評価基準を運用すること」がイイと思っています。

でも「現実」はどうでしょうか?

そんな高いレベルに到達できるでしょうか?そこまでレベルの高い人材が必要でしょうか?

ボクは「現実的な視点」「実務的な視点」で「理想」より「現実」をお勧めするようにしています。

これは「妥協」ではなく「効果を期待して正しく運用するための選択」です。

ハイレベルな評価基準を作成しても、PDCAを回すことが出来なければ「宝の持ち腐れ」どころか「タテマエ」になってしまいます。

「花より団子」、「人事評価基準」は、経営者の「手に負える」正しい運用ができるレベルで作成することを強くお勧めします。「目安」は「評価する側が指導できるレベル」です。

評価する側も手が届かないようなハイレベルな評価基準で社員を評価すると「冷めた社員」から「社長ですらできないレベルでエラそうに評価されたくない」「できるなら社長が手本を示してほしい」と思われるのがオチです。

基礎スキル10項目+実務スキル10項目が適量

ボクがおススメしている「マーカス式人事評価基準」は、基礎スキル=10項目と、実務スキル=10項目の合計20項目。

評価項目がこれ以上になると、それに比例して「手間」がかかり、その結果、曖昧で無責任な雑な評価になる危険性が高くなります。

基礎スキルは、老若男女・職種・役職に関わらず、全員に共通する「ビジネス・パーソン」としての基礎的なスキルです。パソコンで言えば「OS」に相当するスキル。

実務スキルは「OS」に対して「アプリ」。職種ごとに設定されるスキルです。

キホンとなるサンプルを紹介しておきます。

基礎スキル10選のサンプル

評価項目概要
社会力社会人としての認識、姿勢、行動
組織人力組織の一員としての認識、姿勢、行動
課題発見力あるべき姿と現状を正しく具体的にイメージし、
そのギャップとしての課題を明確にするスキル
計画達成力目標やゴールに期限を設定し、
その達成のために具体的な行動計画を立てて、
着実に実行し、ゴールに達するスキル
コミュニケーション力情報を正しくタイムリーに発信・受信するスキル
受注力・発注力社内外を問わず、仕事を正しく受けるスキル
とともに発注、依頼するスキル
報連相力いわずと知れた報告・連絡・相談のスキル
社内外を問わず、思いやりをもって報連相する力
管理力管理とは、リスクを想定し、事前準備、
事前対処するスキル
先読みや想定の力
積極的経験力一言でいえば自習するスキル
成長のために自ら積極的に学習する力
議論力自分の考えや意見を正しく発言し、
逆に他者の話を正しく理解し受け止めるスキル

実務スキル(営業職)のサンプル10選

基礎スキルは、全員共通ですが、実務スキルは「職種別」評価基準です。

営業職、技術職、総務職という具合に職種別に作成します。

例えば、営業職であれば、つぎのような項目が一般的です。

  1. 商品知識力
  2. 新規開拓力
  3. 企画・提案力
  4. 販売力
  5. 接客力
  6. 仕入力
  7. 採算力
  8. 課題解決力
  9. 作戦遂行力
  10. その他PR

それぞれ5段階評価

上記の各項目は「5段階」で採点します。その目安は、つぎのとおり。

  • 【1点】理解・納得レベル(あるべき姿が分かっている)
  • 【2点】行動レベル(日常業務において改善課題がある)
  • 【3点】成果レベル(日常業務に支障はない)
  • 【4点】習慣・安定レベル(イレギュラーなことも対応できる)
  • 【5点】相互支援レベル(他者の指導・組織内外への拡散)

ちなみに、見た目は「1~5」なので、5段階に見えますが、1点にも満たない、というケースがあるので「0点」もありえます。よって、結果として「6段階評価」となります。

(参考)【人事評価基準】5段階評価の作り方と使い方

どのような人材になってほしいか

以上「基礎」と「実務」のサンプルを紹介しましたが、実務の現場ではこれを「たたきだい」として、それぞれの経営者の意向によって数項目を入れ替えて作成します。

例えば「基礎」の「受注力・発注力」よりも、最後までやり遂げる「責任力」のほうを評価したい、というリクエストがあれば「じゃあ、入れ替えましょう」って具合です。

この評価基準を作る時の大切な視点は「当社の社員は、どのような人材になってほしいか」という経営者の望みや期待の強さです。あれもこれも欲張りたくなっても「優先10選」に絞ることが正しく運用するコツです。

(参考)人事評価基準は「好みのタイプ」を伝えるメッセージ

まとめ

以上、ボクがおススメしているシンプルな人事評価基準を紹介しましたが、これでも「シンプルじゃないやん!」と意見をいただくことがありますが、その時は「すぐ慣れるよ!」と返すことにしています(笑)。

つまり、人事評価そのものに不慣れな時は、何を見ても「難しいな」「面倒やな」という印象をもちます。

ここで、ボクの「次の仕事」が始まります。

何か?というと「評価者訓練」です。若手経営者が「評価する側」として人事評価制度を運用するためには、少しトレーニングが必要です。

ボクは経営者と一緒に評価基準を作成し、次に「どのように評価すればよいか」をトレーニングします。

約半年間、経営者の体に「評価基準」を染み込ませるために、様々な事例や想定によるディスカッションを繰り返します。それによって半年前は「シンプルじゃないやん!」と難しい顔をしていた経営者が「めっちゃ、分かりやすい!」とニコニコしてくれます(笑)。

人事評価を通じて経営者本人がワンランク成長した瞬間です。

いかがですか?「シンプルな人事評価」、お役に立ちますように!

30年以上、税理士として数百名の中小企業経営者と向き合ってきた経験から、独自のメソッドで成長志向経営者の「想い通り経営」をサポート。特に、管理会計を活用した業績分配制度の設計、運用フォローに定評がある。20~40代の若手経営者の兄貴的存在として多くの支持を得ている。1961年生丑年蠍座。