「社員が育たない」と感じたときに確認すべき2つのキホン

暖簾に腕押し?馬の耳に念仏?

「社員が育たない」と頭を抱えている中小企業経営者に出会うことは珍しくない。その理由や原因には様々あるが、この記事では「育たない原因」の一つである「大切なキホンが抜け落ちている事例」を紹介しよう。

「大切なキホン」とは、実務的なスキル以前の「人として」ということである、と言っても、決して難しいことでもなく、高尚なことでもない。「社会人として」「組織人として」という「当然のキホン」のことだ。

この「当然のキホン」をインプットするだけでブレークスルーする人材は少なくないので、人材育成で悩んでいるなら、一度試してみてほしい。

「社会人として」「組織人として」という2つの考え方

そもそも、社員が「育つ」「育たない」は、何で判断しているのだろうか?それは、おそらく、あなたの期待に社員たちが「応えている」か「応えていない」だと思う。

私は「中小企業に属する人の能力に大差はない」と思っている。差があるのは「考え方」であり、この「考え方」をより良くするだけで改善することが多いからだ。

ところが、中小企業の人材育成の現場を観察するとOJT(On The Job Training)を含め「実務スキル」の教育研修は盛んであっても「考え方」をテーマにしていることは稀である。

私は、コーチングの現場で「社長、考え方の勉強をしよう」と提案することにしているが、その中でも必修としているのが「社会人として」「組織人として」という2つの考え方である。

この2つの考え方は、当然すぎて「そんなの常識でしょ」「わざわざ今さら」と思ってるのだと思うが、職場で取り上げられることはほとんどない。

しかし、自問自答してみてほしい。「社会人」「組織人」を説明できるか?意外と明快に言葉にできないのではいだろうか?

この2つの考え方を全社全員で共有するだけで、個々のレベルはもちろん、組織としてのレベルも底上げできるので試してみてほしい。

(社会人)=(自覚)×(役に立つ)×(迷惑をかけない)

(社会人)=(自覚)×(役に立つ)×(迷惑をかけない)

これが「社会人の方程式」であり、極めて当然のキーワードであるが、これを全社全員で共有して欲しい。

ちなみに「迷惑をかけない」という中には「ルールを守る」という意味も含んでいる。どんな組織にも様々なルールがあるが、そのルールを守らないことは誰かに迷惑が掛かっている、ということであり「ルールを守りなさい!」と叱るのではなく「社会人としてダメだよ!」というフレーズで注意を促すことになる。

下記は、私がコーチング先の企業の「基礎スキル研修」で話しているシナリオを抜粋した一部だ。参考にしてもらえれば幸いだ。

「春から社会人1年生!」とか「社会人として恥ずかしくない様にね」など「社会人」という言葉をよく使いますが、何ですか?社会人って?説明できますか?

色々な意見がありますが、みなさんはどう思いますか?

「お金を稼いでいる人?」だったら、お金を稼がなくなったお爺ちゃんやおばあちゃんは「なに人」になるんでしょうか?

あるいは、「学生でない人?」では、小学校入学前の子供たちは社会人ですか?

方程式を確認しましょう。

(社会人)=(自覚)×(役に立つ)×(迷惑をかけない)

まずは、社会人としての「自覚」です。

人は1人で生きていけません。社会の中で生活しています。まず、それを自覚する必要があります。夜道をフラフラ歩いていても安全なのは、だれかが治安を守ってくれているからです。

蛇口をひねると水が出てくるのは、水を作っている人がいるからです。そんな「当たり前の自覚」をする必要があります。それが分からないと「社会人のくせに、そんなことも分からないの?」と後ろ指を指されます。

社会がイヤならどこの国にも属さないジャングルに潜んで1人で生きてください、ということになります。

「(社会人としての)自覚」が1つ目のキーワードです。

2つ目は「役に立つ」というキーワード。

程度の差はあっても、役に立たない人は居ません。すごく役に立っている人、少しだけ役に立っている人、その大小は関係ありません。社会の中で、それがどれだけ小さくても「誰かの役に立つこと」が社会人の2つ目のキーワードです。

3つめは「迷惑をかけない」というキーワード。

約束を破ると「社会人のくせに」と言われます。時間を守らないと
「社会人のくせに」と言われます。

例えば、飲食店のアルバイトが、不適切なことをやったというニュースを聞いたことがあります。まさに迷惑行為です。「正しい考え方」の1つである「社会人」としての正しい考え方が出来ていない事例の1つです。

有名なスポーツ選手や、歌手でもありましたね。当然、社会人としての自覚はあったでしょうし、甲子園や東京ドームでホームランを連発してファンを喜ばす、まさに役に立っていた選手が、我々には入手できない特別な薬を使って逮捕されました。つまり「迷惑をかけて」社会人失格、となった事例です。

もう、お分かりのように、この社会人と言う言葉は「大人」と読み替えることもできます。日常会話で「大人」と表現している意味合いと同じと思ってもOKです。

さらに、理解を深めてもらうために「学生と社会人の違い」を紹介しておきます。この「社会人」は、世間一般で使っている意味の「社会人」です。さて、学生と社会人、何が変わるのでしょうか?

1つ目。学生はインプットが仕事であることに対して、社会人はアウトプットが仕事という違いがあります。学生は勉強してインプットすればするほど「よく頑張っているね」と褒めてもらえますが、会社で勉強していると「仕事しなさい」と今度は叱られ、真逆のことが起きます。社会人は成果をアウトプットすることを求められます。

2つ目。学生には「合格ライン」があります。満点でなくても80点や90点で「よく頑張った!」と褒めてもらえました。ところが、社会人になると「満点で当たり前」、120点取ると「スゴイ!」と評価されます。反対に90点の仕事は「10点足りない」といわれてしまいます。つまり、学生は合格でいいけど、社会人は「満点以上」でないといけない、という大きな違いがあります。厳しいことを言うようですが「結果」が求められます。

例えば、ラーメンを食べに行って、いつもは2枚乗っているチャーシューが乗っていなかったら、ほとんどのお客さんは「チャーシュー乗ってないですよ!」とひとこと言います。ところがラーメン屋の大将が「僕は一生懸命作ったんだ!チャーシューがなくてもおなか膨れるでょ!」と逆切れしてきたら?もうその店には2度と行かないはずです。

反対に、いつもは2枚のチャーシューが5枚乗っていたら「え、普通のラーメンを頼んだのに、これってチャーシュー麺?」と思います。そんなあなたの顔を見て、大将が「いつもありがと!今日は3枚プレゼントしておくよ」と言ってくれれば、チャーシューの枚数がどうのこうので
はなく、その気持ちがすごくうれしく感じるはずです。これが「満点以上」の意味です。

さて、3つ目の違い。「カンニング」です。みなさん、学生時代、カンニングってしましたよね?え?してない?もう時効ですよ、やりましたよね?カンニング!なぜ、ここでみなさんは「やってない!」とウソをつくのか?それは「悪い事」って認識しているからです。そうです、学生の時のカンニングはNGでした。ところが、社会人は「何でもあり」です。むしろ「1人でやり遂げなければ」と、誰にも頼らずすごく頑張っている人。その姿勢は評価できますが、残念ながらそれも「満点以上」の場合だけです。もし、自分1人でやらなければ、と頑張っても結果が満点でなかったなら、つまり「成果」が足りなかったら認めてもらません。満点以上のアウトプットのためなら、カンニングでも、代行でも、何でもあり!なのです。

学生は、一生懸命勉強=インプットして、自力で合格ラインを目指す人。社会人は、手段を問わず、満点以上のアウトプットをする人なんですね。

さて、如何ですか?時々若い人が「学生気分が抜けてない」と言われているのを見聞きしますが、この3つに当てはめると「何が学生気分」なのか、説明することができますね。

(組織人)=(目的認識)×(役割認識)×(行動・実行)

(組織人)=(目的認識)×(役割認識)×(行動・実行)

これが「組織人」の方程式であり、これも「当たり前」のキーワードで結んでいる。

  • 目的認識:会社が目指していることを正しく理解し、認識しているか?
  • 役割認識:会社の目的実現のための自分の役割を正しく理解し、認識しているか?
  • 行動・実行:自分の役割を果たしているか?

このいずれかが欠けると「組織人として=会社の一員としてダメだよ」という話になる。

これも私の「基礎スキル研修」のシナリオの抜粋を転載しておくので、参考にしてみてほしい。

組織人というと堅っ苦しいですが、人が2人以上になると、それは「組織」です。イメージを軽くするために「チーム」と表現しましょう。

みなさんは、バーベキューを想像できますよね。気の合った仲間たちとのバーベキュー。「みんなで、バーベキュー行こうよ!」「行こう行こう!」と「チーム」が出来上がります。「バーベキューを楽しむチーム」です。「どうせなら、今までで1番楽しい最高のバーベキューをしようよ!」「賛成!賛成!」となり、このチームは「最高のバーベキューを楽しむチーム!」となりました。

さて、話は、ここからです。。。

この最高のバーベキューを楽しむチームの一員として、つまり「組織人」として、です。

(組織人)=(目的認識)×(役割認識)×(行動・実行)

1つ目は「目的認識」。

チームの一員であれば「何の集まり」か?分かっていますよね。「バーベキューの集まり」ではありません。「最高のバーベキューを楽しむ集まり」です。この「最高」という認識がズレるとトラブルが起きます。「いつものバーベキュー」のつもりで参加すると、他のメンバーから「それって普通やん!」って文句を言われます。「普通の何が悪いの?」「最高のバーベキューって言ったやん!」と、この「最高の」を忘れたメンバーのためにたちまち楽しいはずのバーベキューが気まずいバーベキューになってしまいます。「チームプレー」のためには、この「目的認識」がすごく重要なのです。

2つ目には「役割認識」。

バーベキューでは、それぞれが役割分担して、みんなで楽しむものです。「僕は、何もしたくない。お肉焼けたら、声かけてね~おやすみ~」って奴がいたら・・・。これまた気まずいバーベキューになってしまいます。「僕は、お肉を買ってくるね~」「じゃあ、僕は、ドリンク用意するよ!」「私は、当日焼き係するね~」と、それぞれが役割分担するから、楽しいんですよね。

さて、3つめは「行動・実行」です。

例えば、ドリンク係の彼が、当日に「あ、ドリンク忘れてた」と、なったら・・・。ドリンクが無いバーベキュー?最悪ですね。。。つまり「役割認識」はしていたのに「行動が伴わない」結果です。役割を果たさなければチームの一員として失格です。

「組織人」としての成長とは「目的認識」がさらに強くなるということであり「最高の中の最高を目指そう!」って感じです。

「役割認識」も、もっと重要な役割を担おう!と強くする。そして、行動・実行のレベルが質も量もスピードも上がるという具合に進化すると、その人はチームの一員としてさらに成長したな~と評価されるわけです。

成長のための正しい考え方のひとつ「組織人」。
「チームの目的認識は間違ってないよね!」
「自分の役割認識は間違ってないよね!」
「求められる行動はできてるよね!」
というように、常にチームの一員としての自分を振り返ることができる「正しい考え方」です

成長のための前提となる考え方

この「社会人として」「組織人として」という2つの考え方は、人の成長のための前提となる考え方である。

「仕事は良くできるが、協調性がない社員」

「仕事はまだまだであるが、気配りが素晴らしく、ムードメーカでもある」

というような両タイプを「仕事のスキル」だけで評価し辛いと思う。前者の協調性の無さで、誰かが迷惑を被っていたり、後者の気配りやキャラクターがチームにとって大いに役に立っていたり、ということがある。

後者は「実務スキル」のトレーニングを続ければよいが、前者の場合には「仕事は申し分ないが、社会人として改善しよう」と協調性を改善させるアドバイスやフォローが必要だ。それによって、協調性が改善できれば「お役立ち度」が大きく変わるだろう。

言われてみれば「当然の常識」であるが、上述のように「言語化」して全社全員で共有することが大切なのだ。

まとめ

以上、「社員が育たない」と感じたときに確認すべき2つのキホンとして「社会人とは」「組織人とは」を紹介した。

(社会人)=(自覚)×(役に立つ)×(迷惑をかけない)

(組織人)=(目的認識)×(役割認識)×(行動・実行)

ちなみに、この2つの考え方は、社員に限ったことではない。実は、経営者本人が課題を抱えていることもある。この機会に自問自答してみてほしい。

「社長、誰かに迷惑をかけていませんか?」

(参考)「経営者の社会力」社会から認められ、期待を集めるチカラ